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一般社団法人 ディレクトフォース

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DFの社会貢献活動

2015年10月12日

見出し食と農業研究会

見出し トピックス(2015年版)

第21回 石川県白山市(2015/09/28~29)

水田新業態「株式会社六星」と白山麓、森の酒造「小堀酒造店」

今回は研究会の目的の一つである "米" へのこだわり、日本の食文化の現状の確認することであった。開通間もない北陸新幹線に乗って "目と耳と足で歩く石川県白山市の加賀平野" を訪れる計画をした。初めて泊まりを入れて2日間の見学旅行となった。快晴の秋晴れの中、稲刈りの時期となり充実の内容のものとなった。

見学の前後にTPP交渉が合意された。強い農業を目指した、新しい担い手による、大規模経営を見て、これこそ、農業再興の見本と、大いに期待した。

稲穂

新宿中村屋の創業者は、昭和2年 "純インド風カリーライス" を国内で初めて世に出した際、江戸時代埼玉県幸手(利根川添い)で旗本が食べる贅沢米として耕作させていた "白目米" を再び復活させ評判をとった。その後第2次世界大戦勃発と共に市場から一旦消えたが、白山市の株式会社六星が中村屋との契約栽培により名物インドカリーライスの米として3度復活させて現在に至っている。

三納会員の生まれ故郷の白山市は地酒の宝庫であり、前夜の宴会、試飲そして小堀酒造の見学では吉田社長の "こだわりのいろいろ" を説明して頂いた。

9月28日、11名の会員は北陸新幹線で金沢そして20㎞離れた加賀平野の白山を訪れた。

 

◇ ◇ ◇

*株式会社六星

沿革

  • 昭和52年、創業の4人は "農業=家業" という概念を壊し一つの組織にした。
  • 昭和54年、米生産から加工(餅等)販売への新境地を展開、稲作は農地請負計画が進行。
  • 平成元年〜、組合法人から有限会社化、施設の拡大・社員の増加・店舗運営をスタート。
  • 平成19年、株式会社化(創業メンバーから新経営陣へ)、石川県一のコメ農家となる。
  • 本年4月、安倍首相が視察。
    創業者たちの大英断と若い経営者の新感覚で会社農業を成功させている。
    栽培→加工→販売6次産業の形成を成している。
    年商9億8千万円(平成26年度)
    商品分類別内訳…餅:3億5千万/米:2億1千万/惣菜・漬物:1億9千万/和菓子:7千万/その他
  • 販売部門別内訳…卸売4億円/店舗4億7千万/通販8千万/その他
  • 栽培面積145ha(東京ドーム30個分)、200名の地主から請負栽培
  • 営農スタッフは10名。農学出身者は1名、他産業からの転向者が多く、働き盛りで、やる気十分、創業者からの技術伝承も終え、新しいアイディアを実現している。
    高齢者からの農地請負は、努力なく集められている。
六星本社会議室で説明を受ける 本社に併設されている店舗 中村屋由来の「白目米」田を背に
巨大な稲刈り機で収穫 カントリーエレベータ 籾を保管するサイロ

軽部社長の言葉より

農業は天候に左右されやすい仕事であるが、新しい農業経営としてスタッフ全員の気持ちを一つにして「とてもやりがある仕事」として取り組んでいる。

ある会員が "目から鱗" との感想を持った人もいたが、確かに社長は48歳であり、男女の社員は若い。稲刈り時の耕耘機の従事者は20歳台で生き生きとして働いていた。コメの生産は、田植えと稲刈り時に多くの人手がかかるが、餅等の加工、むすび等の日配品の販売によって年間バランスよい労働を確保している。

本社店舗前で記念撮影

 

◇ ◇ ◇

*小堀酒造店

全体の行程図

加賀平野

  • 白山からの水量は豊富であり、水質は良好で手取川沿いには多くの酒蔵がある。
    柳酒造「菊姫」・車多酒造「天狗舞」・小堀酒造「萬歳楽」・吉田酒造「手取川」・鹿野酒造「常きげん」等があり、全国的に廣まっているブランド・1升瓶2万円の高級酒・ニューヨークで愛好されているブランドやANAで採用されている梅酒等多士済々である。

前夜の宴会

  • 地元能登牛のすき焼きに舌鼓をうった。酒は会員推薦の複数の地酒品評会となった。当然のことながら推薦者の "これが一番うまい酒" で盛り上がったが結論は一本に絞れなかった。

小堀酒造見学(加賀の菊酒萬歳楽)

  • 江戸享保年間からのつくり酒屋であり、毎年全国清酒品評会で受賞を重ね昭和27年には特選第一位に輝き日本の酒蔵のトップに位置づけられた。
    「森の吟醸蔵 白山」と称する酒蔵は人里離れた杜の中に、杉やヒノキをふんだんに使った特異の工場であった。白山伏水を深く井戸掘りして使い、酒米は山田錦だけでなく、地元の「北陸12号」「五百万石」を育て市場での差別化に徹底して取り組んでいる。
    社長は、小型の設備を生かし、 "心と技を尽くした良酒づくり" に専念している心意気を感じた。
  • 加賀梅酒
    ノーベル賞受賞後の祝宴で採用・NIKKEI梅酒ランク第一位・ANAファーストクラスで採用され、料理との相性やおすすめの酒器など本格的である。
    "米・水・技" の最高を求めていることに感銘を覚えた。
「森の吟醸蔵 白山」 会議室で説明を受ける 見学コースのふたつ目の洗米機
貯蔵タンクのある2階部分 日本酒製造の最終工程 小堀酒造本店で試飲


見学後、鯉の洗い、クマの刺身などに加え、岩魚の骨酒などで昼食。兼六公園、金沢城などを散策して帰路についた。

"米文化" は日本の食文化の原点と言っても過言ではない。政府は "農業" を成長戦略の一つに挙げている。TPPの締結・日本の食材、食文化の海外進出・農民の高齢化等の記事が毎日のように新聞や雑誌に載っている。

4月に安倍首相が六星に視察に来たが、今後どのような政策が出てくるのだろうか。

小堀酒造本店前で記念撮影
初日の宴会で食したすき焼き 岩魚の骨酒をぐい呑みする

 

今回の参加者は以下の11名でした(あいうえお順)。

池上眞平 酒井尚平 三納吉二 四方満 鈴木治樹 千原長美 富沢進 中尾誠男 藤田公一 守屋雅夫 渡辺明

◇ ◇ ◇

2日間の写真をアルバムにしました。

六星見学

小堀酒造見学

兼六園と金沢城公園

(幹事 四方 満)

第20回「東京商品取引所」(2015/06/16)

「東京商品取引所」

「東京商品取引所」正面

生産現場見学が続いたので、農産物原料の先物取引を学ぶため、日本橋堀留町にある東京商品取引所で研修を受けた。兜町の証券取引所と仕組みに、類似点多く、相場取引の実態を興味深く学習できた。

上場商品は、大豆、トウモロコシはじめ、金銀、原油、など。初めに、先物取引の価格変動リスクヘッジ、資産運用、投機・デリバティブの仕組み説明があった。

商品取引は、現物渡し、現物受けが特徴で、そのため、受渡月2カ月ごとに相場がたつ、したがって1年先までの6限月別に取引するのが通常。毎朝の寄付きが、板合せ(板寄せ)で、決まり、寄付きの成り行き買い、成行き売り注文が、どのように処理されるか、その後のザラバ売買に移る実態など、株式取引と同様で、臨場感ある説明であった。世界の取引所の動向では、歴史あるロンドン、ニューヨーク、シカゴ取引所の取引高を上海期貨交易所が抜き去り、世界一になったことに驚いた。最近、上海の中国株式が異常に高騰しているが、商品取引も、同様に過熱しているのだろうか。なお、中国では海外市場での取引が制限されている。

続いて、農産物市場の動向について説明があった。

重要穀物、トウモロコシ、小麦、米と大豆の生産消費動向では、中国はじめ新興国の食肉消費増につれて、世界の食糧需要が急増しているが、主産地米国やカナダなどでの遺伝子組みかえ穀物による反収増加とブラジル・アルゼンチンの増産で、需給バランスがとれている。米国のトウモロコシ生産量は3億9千万㌧、このうち、1億3千万㌧が自動車用バイオエタノールの生産に使われている。また、トウモロコシ輸出ではウクライナの台頭が目立っている。

東京商品取引所
右は「シカゴと東京の大豆価格チャート」<PDF形式>

大豆では中国が世界貿易量の8割近い7000万㌧を輸入し、異常な海外依存となっている。日本は、トウモロコシを年1500万㌧輸入し、世界一の輸入国である。会員から「非遺伝子組み換え大豆」が豆腐、納豆、味噌醤油に加工されているが、遺伝子組み換え大豆と混入しないのか質問あり、米国・カナダから日本に輸入する90万㌧の大豆は、農地指定、物流指定で証明書付きであるとの説明があった。

穀物の国際相場は乱高下するが、東京商品取引所での建値は、為替と海上運賃(フレート)を反映する。近来、国際相場が過熱する時は円高、安値推移している最近は円安、このため、東京相場は国際相場に比較して安定している。これは輸入大国日本にとって僥倖だと感じた。

会員から「個人などの先物取引参入に、制限はあるのか」との質問あり、個人など投機的参入は多いが、「年齢65歳未満、年収800万以上」との説明に「おれたちは出来ないのか」と全員失笑した。研修はチャート(罫線)の読み方を含めてスライド説明で行われ、分かり易かった。

その後、実際に取引される場内を見学、コンピューター処理のため、場立ちが手を振り、人間の欲のぶつかり合いだった昔日とは違い、静かで冷たい風景であった。2時間以上の研修は内容が面白かったので長く感じず、満足して終わった。

それから人形町の居酒屋で懇親会を開き、ひと時を楽しんだ。

次回は9月、石川県白山にある米の生産農場「六星」とめでたい酒「萬歳楽」の醸造元を見学する予定。

今回参加、藤田、河村、鶴岡、酒井、三納、四方、吉崎、長谷、七里、鈴木、守屋、谷口、中尾、渡辺、千原の16名でした。

(酒井尚平)

第19回 食と農業見学記(2015/02/11)

味の素川崎工場

第19回「食と農業研究会」の見学先はDF会員野村裕晟様のご紹介をいただき味の素株式会社川崎工場でした。前日の寒い雨の日とは打って変り暖かい日差しの中での見学会となりました。

京浜急行大師線鈴木町駅を下りますとそこはすでに味の素川崎工場正門前、駅の周りは味の素の工場が取り巻いていました。私は少し早めに行ったのですが、駅前でうろうろしているとすぐさま味の素の正門から見学担当と思われる女性私に近寄り「見学希望の方ですか?お仲間をお待ちでしたらどうぞ工場の中でお待ち下さい」と声をかけられました。今回紹介いただいた野村様のご威光によって総務の方が気をきかせて声をかけられたのかと思いきや、そうではないようで、私たち以外にも数組の見学者がありみなさんそのような対応をされているようでした。その女性について踏切を渡るとそこはすでに味の素川崎工場の正門入り口、見学対応の方男性2名女性1名がおられ見学者の応対をされていました。その対応の素晴らしさに感心して彼女と話をしていたのですが、工場の中まで案内されそうになり、あわてて「いやいや、我々の仲間との待ち合わせは駅前でということにしていますので、駅前で待たせていただきます」と言って再び踏切を渡り改札口へ 。

その後、彼女は皆様がお集まりになった頃合いをみて再び踏切を渡り我々のところまで出迎えに来ました。さすが味の素、私も多くの見学会に参加してきましたがここまで徹底した対応は経験したことがありません。

彼女について工場に入りPR室に行くかと思いきや見学者用の待合室でしばし休憩、そこにはグッズ販売をやっていましたが、お土産を買うのは見学の後ということにして、全員揃ったところでみなさんPR室に案内されました。

味の素川崎工場
見学者用の待合室向いにあるPR室入り口で記念撮影

PR室に入り彼女より川崎工場見学の説明を受けました

  1. 味の素社の世界進出の現状、国内拠点
  2. 味の素製造方法原料・微生物による製造方法
  3. 川崎工場敷地面積約10万坪、主な生産品目は「味の素」「ほんだし」「Cook Do」
  4. 1908年菊田菊苗博士によりグルタミン酸(MSG)がうまみ成分であることが発見され、1914年鈴木三郎助により工場生産開始、
  5. 試食タイム
    味噌汁を使ってのMSGの旨味効果の味覚テスト
    ダシの入っていない味噌汁を最初に飲み、その味噌汁に「味の素」一振りかけ試飲すると、見事においしい味噌汁になることを体験。素晴らしい演出です。その時にいただいた「味の素」ミニボトルもかわいらしく魅力的。
    金と手間をかけているな、と変なところで感心。
味の素川崎工場
明るくはきはきしたこの方に工場を案内いただいた

いよいよ工場見学

ミニバス「アジパンダ号」に乗って東京ドーム8個分の敷地内を巡回。MSGの生産ラインはミニバスから眺めるだけでしたが石油精製プラントのような外観はその規模の大きさだけでなく、構内隅々まで整理整頓された工場に「さすが味の素」と感心させられました。

まもなくアジパンダ号は「ほんだし」の工場に到着、「ほんだし」のライン見学の前に落ち着いた雰囲気の会場に案内され「ほんだし」の主原料である削り節を削る体験しました。ただし、なぜかここで自分が削った鰹節の試食は禁止とのこと、こっそりと試食する。久しぶりに香りのよい「ほんぶし」を食べました。「ほんだし」生産ライン見学の後、高級和風レストランかと思わせるような心地よい場所に案内され、「ほんだし」を添加した「おにぎり」を試食、これもまたおいしくいただきました。

ふたたび「アジパンダ号」に乗って今度は工場の正門を出てすぐの京浜急行大師線の踏切を渡り「Cook Do」生産ラインを見学、ここで生産ラインのほか品質管理室も上から見下ろすことができびっくり。品質管理経験者の私としては複雑な気持ちでした。

最後に資料展示室を見学

味の素社の貴重な歴史資料が数多くありました。震災で多くの物が失われたにも拘らず「よく残っていたな」と変なところで感心しきり。

みなさんお土産をいただいた後見学者用お店に入りお土産を物色。ずうずうしくも従業員用売店に乱入しお土産を購入し、帰路に着きました。

味の素川崎工場
見学者用ショップや従業員用のコンビニで買い物

今回の工場見学をお世話いただいた味の素出身の野村様に感謝・感謝です。

その後は恒例の懇親会と称する飲み会です。年齢の割には少し多めのお酒をたしなむ皆様と楽しい時間を過ごしました。

尚この席が始まる前にリーダーの酒井様より

会員数も23名となり世話人1人では限界、複数世話人を置きたいとの提案があり、四方様、藤田様、守屋の3名が副世話人となり酒井様をサポートすることりました。次回第20回会合は6月ごろを予定、東京証券取引所を見学し経済だけでなく、農産物取引、例えばシカゴCORN相場と言った内容で進めることになりました。

 

参加者

藤田 河村 鶴岡 酒井 三納 四方 谷口 吉崎 長谷 植木 鈴木 福元 守屋 中尾 富沢 渡部 千原(敬称略)

(文責 守屋)

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