2020年3月4日
猪熊 建夫
会員ナンバー007の猪熊です。このたび、新著「『伝統高校100』東日本篇と西日本篇」を上梓し、武久出版から発行しましたので、ご紹介いたします。
2012年~18年8月までの6年間、小生は週刊エコノミスト誌で「名門高校の校風と人脈」という連載を、毎週計300回にわたり、続けてきました。
掲載した約300高校の中から100校をピックアップし、加筆して2018年9月「名門高校100」(河出書房新社)として出版しました。
今回の「伝統高校100」は、残る200校を東日本と西日本に分冊して出版したものです。
校歴100年を超えるような伝統高校は、日本列島各地に散在しています。どの県でも、伝統高校を数校挙げることが可能です。こうした芸当ができるのは、先進国の中で日本だけ、といって過言ではないでしょう。
江戸時代から地方分権が進み、各藩は競って学問を奨励しました。江戸時代後半から幕末にかけて各藩は藩校をつくりました。廃藩置県で藩校はなくなりましたが、明治になってその伝統を引き次ぐ旧制中学が続々と生まれました。お城や陣屋は壊されましたが、旧城下町には、必ずと言って良いほど旧制中学が創立されました。
旧制中学は戦後の学制改革で新制高校になりました。全国各地の高校から人材が輩出しました。
例えば、ノーベル賞の受賞者。日本人で東京都内の高校出身者は累計27人の受賞者のうち、1人しかいません(1987年に医学生理学賞を受賞した利根川進=都立日比谷高校卒)。
以下のとおり、地方の片田舎の伝統高校の出身者が、ノーベル賞学者の供給源になっています(敬称略)。
2014年の物理学賞 ‥‥‥‥ | 赤崎 勇(鹿児島県立第二鹿児島中=現甲南高校卒) |
天野 浩(静岡県立浜松西高校卒) | |
中村修二(愛媛県立大洲高校卒) | |
2015年の医学生理学賞 ‥‥ | 大村 智(山梨県立韮崎高校卒) |
2015年の物理学賞 ‥‥‥‥ | 梶田隆章(埼玉県立川越高校卒) |
2016年の医学生理学賞 ‥‥ | 大隅良典(福岡県立福岡高校卒) |
2018年の医学生理学賞 ‥‥ | 本庶 佑(山口県立宇部高校卒) |
2019年12月には吉野彰が化学賞を受章しました。大阪府立北野高校の出身です。久しぶりの大都市出身者でした。
要するに、大学受験で全国に鳴り響く名門高校出身者より、田舎の伝統高校出身者の方が大成する、ということです。
小生は、そういう全国の伝統高校を300校以上も訪問し、取材を積み重ねてきました。過去記事をアップデートし加筆したのが、今回の新著です。
「早稲田慶応・東大京大は、もうやめよう」「高校こそが人物を見るバロメーターだ」という考えに小生は、凝り固まっています。意のある方は、この新著を手に取ってください。
以上
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【編集註】出版社:武久出版 ● 著者:猪熊 建夫● 発行年月日:2019/11/27● B6版 ● 各¥1,980(税込) ● 書店/ネット書店で発売中