2021/10/16(No.351)
髙木 哲実
半世紀以上前、中学生になった時「英語の勉強のため」に当時のFEN(米軍極東放送網)を聴き始めて以来音楽が欠かせないものとなり、あらゆるジャンルの洋楽に「ハマ」った。どんなジャンルの音楽も好きだけど、流行りよりじっくり味わえるジャンルとしてまず〈Jazz〉を推したい。有名どころの名曲は省いて、あまり馴染みがないかもしれないけど、でもなにより一度聞いてもらいたいという人たちの名盤名曲を、かねてより書きためている推薦アルバムのかたちで、アーティストや背景へのこだわりを含めて、DFのJazz愛好者の皆さんに紹介します。以下の説明の中で、ジャケットの画像をクリックすると〈YouTube〉で視聴できますので、コロナ禍の中、ウイルスならぬミュージックを浴びてひと時を過ごしていただければ幸いです。
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Swing Jazz のバンドリーダーとしても作曲家としても有名だけど、これは珍しいトリオでのアルバムで、しかも当時若手売出し中のCharlie MingusとMax Roachがバックで、そのせいか他では聴けない”Duke”のアグレッシブな”Modern Jazz”が聴ける。1962年の録音だから時代はmodernで当たり前ではあるけど。この後DukeはColtraneやMilesともやることになる。
ジャケも渋い、Dukeに何か話すMax Roach、後ろでベースを弾くMingus、モノクロで味がある。ちなみにアルバムタイトル曲は1曲めに入っていて、出だしのベースからピアノの絡みもすごい。Money Jungleの意味は不明。
“Duke”同様”Bird”の愛称で有名なCharlie Parkerと上向きに曲げたトランペットのDizzy Gillespie。スイングからモダンへの創始者達の元気な作品。
Sir Dukeを作曲して演ったStevie WonderやParkerの渾名をそのまま使ったYardbirds(=囚人),Jazz spot Birdlandなど、この時代の巨人の影響力は凄い。曲はこの時にParkerが作曲した曲で、今やスタンダードとなり色んなプレイヤーが演奏する名曲のまさに生まれたてのもの。確かにスイング時代のような踊らせる演奏ではなく、tpとsax,pianoと続けざま共演で小気味好い。
マイルスは除外したけどこの初期のリーダーアルバムは別。A面は53年B面は56年録音でA-1がこの曲。Sonny Rollinsが務所帰りでCharlie Parker がヘロインと酒浸りでダブルTennor saxで参加している。Milesって人はModern Jazzを次々に変革し続けてかつ新人発掘が上手で、それぞれの時代に名盤を出し名曲を残してるけど、初期のものは当たり前のような演奏にどこか”才気”が感じられて心地良い。この曲を一度ラジオの「マイルス特集」にリクエストしたら取り上げられて、会社で残業中に聴いた。なぜ”蛇の歯”なのかはよく分からない。Rollinsは生きていて90歳!
大物Musicianの褒め言葉のジャケットで、EvansのSoloとTrio、BalladとUp-tempoが良い具合に配合された名盤。この曲は左手が終始同じフレーズで、ってことはコードはひとつかふたつで、右手の特にハイノートが美しく、まさにPeacefulな落ち着いた気分にさせてくれる。1958年はEvansがMilesのQuintetかでpianoを弾いていた時期で、1959年のMilesの大傑作Kind Of BlueのFlamenco Sketches(特にalter take)の出だしはこの曲そのまんま。モードジャズの誕生にはEvansありということの証拠。
Bill Evansつながりで突然新しいアルバム。でもこの人はハーバード出で今や82歳現役と異色なPianist。Evansタッチのピアノを弾く。このアルバムは「Michele Legrandに捧ぐ」というもので、シェルブール(=アルバムタイトル)に始まり「おもいでの夏」とかルグランの名曲集。で、この曲は日本未公開?のリチャードブルックスのThe Happy Endingという映画の主題歌で、Jazzの人が大好きな曲。Vocalものも良いしBill Evansのも凄く良いのだが、Kuhnの”エバンスタッチ”のピアノがたまらなく良い。(YouTubeはSteve Kuhn が無くてBill Evansのもの)
Drums以外すべてホーンのNew OrleansのJazz Band。ベースはスーザホーンが奏でる。JazzやBluesの大御所と共演も多い。アルバムタイトルがこの前のSteve Kuhnの曲と同じだがこちらはラブソングではなく、「どうやってdo it rightするのや?」的な社会的メッセージもある。あげた曲のRemember Whenは乗りの良いホーンセクションとドラムスで盛り上げておいてTrumpetのソロが“歌い上げていく”流れが素晴らしい。2000年頃BlueNote東京でのライブに仕事で遅れ、着いた時はアンコールになってたけどこの曲を演ってくれて満足でした。
ベルギー生まれということになっているが本物のジプシーで、Gypsy Swingというジャンルを作ったことになっている。1961リリースだが1949年にStephane GrappelliのViolinとの演奏が1961以降何度かリリースされたもの。Jazz Guitarというジャンルを確立した大御所で、避けては通れない人。繊細でノリの良い渋いギターを聴ける。前出のライブつながりだが、この人の孫がギターで出ているライブをNew YorkはBirdlandで観た。同じ編成ででも今の迫力で感動!その時の演奏が”Swing Guitar Live at Birdland”でリリースされている。これもおすすめ。
Coltraneの愛弟子ということになっているParoah Sanders。でも彼にはColtraneの“探求者”っぽいところが無く、少し神がかりだけどスタンダードをやるとリリックで心地良い。アルバムタイトルの曲はKarmaというアルバムでは片面全部使って演っていてそこではVocalのLeon Thomasのヨーデルも良い感じ。ロックの人がハマる曲らしい。ここでの推薦はスタンダードそのものColtraneも大好きなラヴソング。聴き比べても良い。
特別にもう1曲Whiteny Houstonの名曲。彼女の歌同様歌い上げるsaxが最高で、次のアルバムタイトル曲へと自然に流れる。このアルバムはスタンダードと Sanders Originalと良い配分でGood。因みにこの人も生存現役80歳。
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もっと沢山紹介したい曲がありますがこの辺で。あらためて整理し直しながら聴いてみると、その都度新しい発見があります。昔から今は希少になってしまった「ジャズ喫茶」というところで、黙ってレコードを聞いている人たちをバカにする風潮があったけど、音楽、特にジャズは映画や文章やアートと同様「聴き込む」ことで演奏するPersonelのやりとりや、彼らのうちでの会話のようなものが見えてくる。その上時間が経って聴いてみるとまた違うところに気づく。ブルースやロック、カントリーは歌詞を含めてまた違った楽しみがあるとは思うけど、ジャズがいいのはそんなところだと思います。
たかぎ てつみ(1217)
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