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一般社団法人 ディレクトフォース

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2020/07/01(No.320)

「釣り」と「親子の絆」と「魚の料理」

矢ヶ崎隆二郎

このエッセーを書くにあたり、はてどのようなタイトルにしようかと考えた。故郷信州小諸のスケッチにしようか好きな釣りの話にしようか迷ったが、最近のコロナ騒ぎでストップを強いられている釣りの話とすることとした。

自分の宣伝になって心苦しいが、学生時代 釣魚会ちょうぎょかいというクラブに所属し休みの時は日本全国を釣り歩いた。勿論足は鈍行、夜行の汽車だったが釣行ちょうこうの為ならと全く気にならなかった。

宮城県 亘理 わたり でヒラメ釣り
(以下 写真は全てクリック拡大可)

会員の皆さんの中にも釣り好きの方は多いと思うが、釣りの楽しさは何と言っても自然に浸りながら魚達と会話をし、最後はそれを自分で捌いて美味しく食べることだと思う。竿もリールも昔と違い今は非常に良いものがあるが、基本は竿、糸、 おもり そして針のみである。私は海釣りが中心で、学生時代は砂浜から投げて白キスを狙い、房総、伊豆半島、紀伊半島、四国、隠岐の島、九州まで遠征した。竿は今は無くなってしまったオリンピック社のアマゾンと93リール、道糸みちいと はヘキストのナイロン糸3号、針は〈がまかつ〉の流線7号、錘は25号、天秤は自家製の小田原天秤で投げた。

前置きが長くなってしまったがそんな思い出に浸りながら、また何処かで尺キス(叉長さちょう 30㎝のキス)を釣りたいなと思っていた所、昨年釣魚会のOB会の行事でキス釣りに行くチャンスがあった。もう投げる体力は無いので羽田の天空橋より船で東京湾での釣りである。私は息子と参加することになった。

ここから絆の話である。息子とは仕事の違いもありこれまですれ違いも多く、日頃会話も少なく寂しいと感じていた所、どの様な風の吹き回しか声を掛けたら行くと言う。父親は嬉しくそわそわと仕度をし新しい竿まで買って参加した。船は30分くらい走って釣り場に到着。水深15m、船の場合錘は15号、仕掛けは1.5mの2本針でエサは青イソメ。私はスピニングリール、息子は両軸リールで第一投。暫くすると先ず息子に掛かる。親は嬉しいと思うと同時に少々ムッとする。形は小さいが久し振りのキスの当たりである。

念願叶った息子とともにキス釣り

息子と私は其々10匹ほど釣れた所で沖を見ながら日頃の会話の少なさを補う様にポツポツと話を始めた。仕事の苦労話、それにどう対処したか、父は何を目標としてこれまで来たか、それぞれの学生時代の思い出、父と母はどうして知り合ったのか、これからの人生はどの様な絵を描けるのか、亡くなった祖父の生き様はどの様だったのか、あまり脈絡はないが息子との久しぶりの会話に戸惑いながらも自分の若い頃と重ね合わせていた。

キスは砂地にいる魚でジャリメ、イソメ等ミミズみたいなものを食している。従って仕掛けを砂の上でゆっくりと這わせあたかも餌が動いているように見せることが大事である。当たりがあったら針が呑み込まれぬ様素早く合わせる。当たりはかなり強く、これがキス釣りの醍醐味と言えよう。釣り上げた真珠色のキスは実に美しく輝いており暫し見とれるほどである。

さて納竿のうかん の後息子と私は釣果を比べると息子25匹、私は20匹だった。この後船宿のマイクロバスで蒲田にある温泉レストランへ。ここは温泉に入っている間に釣った魚を調理してくれるうれしいサービスがあり、我々の白キスは刺身、天麩羅、から揚げとなりこれをビールと共に食べるのだが、その美味さは筆舌に尽くしがたい。会員の皆さんも是非「釣ったら食べる」ことをお勧めしたい。

OB会で魚を調理した後の記念のショット

そして何よりも大事なのは釣果を競うのではなく、食べられるだけのものを釣り、それを調理し、釣った魚に感謝しながら食し、幸せを感じることである。即ち自然と人間の関係は共存であり、釣りの場合も同じく過度に浸食してはならないと思う。今回のコロナも人間が自然に対し領域を過度に広げた結果であり、その傲慢さに自然からしっぺ返しを受けたのではないだろうか。

 国府津の古刹「 寶金剛寺 ほうこんごうじ 」での魚供養

それはそうとして最後に「料理」のレシピの話をして終わりとしたい。
鯖は鯵釣りに行くとよく掛かるが三浦半島の突先、 走水 はしりみず での鯖は 関鯖 せきさば に劣らず身が引き締まって、脂も乗っており上物である。そこで友人より伝授された誰でも簡単にできる「鯖のそぼろ」を記述する。

材料〉:鯖1本(3枚におろす)。人参1/3本、玉ねぎ1/2個、干しシイタケ4枚、生姜1カケ、万能ねぎ少々。醤油大さじ4杯、みりん・酒各2杯、味噌大さじ1/2.

作り方〉:

  1. 鯖の身を中骨と血合いと皮を残しスプーンでかき出す。
  2. 人参、玉ねぎ、もどしたシイタケを粗みじん切り。
  3. フライパンに胡麻油を熱し、鯖の身と生姜みじん切りを炒め、ざっとほぐしたら2.の野菜を炒め合わせる。調味料をすべて加え汁気が無くなるまで混ぜながら煮る。
  4. 火を止め小口切りの万能ねぎを散らす。

酒の肴にも、ご飯の上にかけても最高である。

その他、以前ヒラメを釣ったとき悪戦苦闘して卸した後残りの あらを煮て、それを一晩冷やした後翌日ご飯にかけて食べたところ悶絶した。幸せそのものである。エンドマーク

やがさき りゅうじろう 授業支援の会(会員番号837)
元三菱UFJ信託銀行 

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