( 2017年4月28日 掲載 )
1月31日(火)学士会館にて、168回講演・交流会が75名の参加をいただき15時から開催されました。
講演会は、元スーダン大使の和田明範氏に『日本とアフリカ』というテーマでお話をいただきました。
一般の報道等では得ることの出来ない現地で生活をしていなければわからない情報が(例えば、アフリカを紹介しているキリマンジャロを背景にライオンが寝そべるという写真が、非常に稀な事柄であるか等) 満載の講演でした。
まず講演に先立ち保坂事務局長による同氏の紹介が始まりました。
同氏は、16年間の自衛隊勤務を経て、外務省に移籍しました。外務省の本省では、主に安全対策の専門家として勤務し、海外ではケニア、米国、インドネシア、東ティモールなどに在勤しました。2008年にパキスタンのカラチ総領事、2010年にスーダン大使を勤め、2012年に外務省を退官しました。2014年3月から1年間、NGO日本地雷処理を支援する会(JMAS)の現地代表としてパラオで不発弾処理活動に従事し現在、JMAS顧問をされております。
講演の内容は下記の通りです。
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アフリカは、南北8,000Km東西7,400Kmもある極めて大きな大陸であり、気候もさまざまである。
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確かに赤道付近の海岸沿岸では連日40度ということがあるが、ケニアの首都ナイロビは標高1,800mもあり日本の秋並みの温度で朝晩は肌寒いほどである。
ライオンは50年前には50万頭いたが、現在では2万頭、アフリカ象は第1次大戦頃には500万頭いたが、最近の調査では35万頭と言われている。サイやゴリラなどは絶滅の危機に瀕している。原因は、密漁による乱獲や森林地域の伐採による生息地域に減少、気候変動による生態系の変化と考えられる。
1979年にケニアに赴任した3年間で、野生のライオンを見たのは2回、野生の象は3回しかなかった。ことほど左様に、アフリカは、決して野生動物の宝庫ではない。
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地方に行けばジャングル等の自然が豊富であるが、首都は近代的で美しく、素晴らしい所が多い。ヨーロッパの都市に比べ遜色がないものが少なくない。また、人々は宗教心が強く、日曜日等着飾って教会に向かう姿がよく見かける。決して未開の地ではない。
人々は、旧宗主国の言語(英語、フランス語等)、アラビア語と主要部族語の中から一つ或いは複数をその国の公用語としている。ケニアでは初等教育の前半は英語とスワヒリ語を使用し、後半及び高等教育では全て英語で行っている。日本人が接触するようなケニアの人々は、英語を話すので、私が大学教育を受けたのかと聞かれるほどであった。
アフリカは、実に多様性に富んだところであり、誤った先入観や偏見は危険。
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豊富な資源(レアメタル、石油等)を保有しており、安定的な供給を受けるためには友好な関係を維持する必要がある。
また、2000年以降毎年4〜5%の経済成長をしており、また現在10億人であるが2050年には20億人と言われている。このことは、日本企業にとって潜在的な大市場になる可能性が大である。
国連全加盟国193カ国の中で54カ国がアフリカであるため、日本が国連で積極的に活動するためには、協力関係を強固にする必要がある。
貧困、紛争、難民、感染症等は国際社会全体の課題。国際社会の主要先進国である日本は責任ある一員としてこれらの課題に取り組むことは責務である。
また、日本がこのような問題に取り組むことは国際社会での信頼の向上と発言力の強化につながる。
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日本政府はODAを主体とした援助をしていると同時に民間及びNGOをバックアップしている。
その中心役割を担っているのは、アフリカ開発会議(TICAD)であり、援助から投資に重点は移行している。
日本に対抗して中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)を通じて支援の拡大をしていたが、アフリカの発展や安定へも貢献する姿勢を見せ始めている。中国のアフリカへの進出は日本をはるかに凌駕している。
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更に、中国は、経済面以外にジブチの港湾整備支援に象徴される様に支援を絡めて軍事的な進出を図っている。
日本らしい支援つまり質の高い技術と人材育成をもってアフリカの安全と発展のため、公正で真面目な支援を粘り強く進めていくべきと考える。
最後に南スーダンにおける自衛隊のPKO活動について南スーダンは産油国にかかわらず、世界最貧国の一つ。自衛隊の活動は南スーダン1国の支援にとどまらず、国際社会への貢献に大きく寄与。その活躍と成功を祈りたい。
以上
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(森川紀一・記 三納吉二・撮影編集)