ホームへボタン DFロゴ
アーカイブ目次

2012/12/01(No138)

「自ら選ぶ本当の人生」

 

幸脇 一英

筆者寝食忘れて働き続けた出版業界に突然の陰り現象が勃発した!

90年代、それまで経済事情に影響されなかった出版物だが、新車ニュースが載れば必ず売れた車雑誌が突然の販売不振という異変。コミックやゲームジャンルなどエンターテインメントの拡大により業績は未だ大躍進中であったが、出版業界も他産業同様、経済環境に左右され始めた証であった。多様な自社発行雑誌の読者反応から感得したキーワードの「安価」によってわが社だけが業績伸張。これが社内的には逆作用となり、"皆で頑張ればまた良い時が来るよ!" と受け止めて激変を感じないボードメンバーへの不信と、オーナー経営の不安を再認識。思えば、時は「失われた20年」の幕開けであったのだ。

これを転機にメディアを通じての社会貢献から一転して、学生時代に体験したボランティアの世界に再度身を投じることにした。そして国連・平和大学に合格して感動。アジア人30名枠で日本財団からフルスカラシップを頂き、対象外の年齢なのにと号泣した。仕事以上のタフさ、学業の厳しさに何度もギブアップしかけたが、諭されて何とか修士号までたどり着く。その実践と恩返しにと国際ボランティアとしてブラジルサンパウロへ渡航し、滞在2年。

筆者
南米の中心地に立つ

滞在中ブラジル日本人移民にお世話になりながら、移住当時の厳しい生活事情を聞き呆然! 強い教示を賜る。彼らは知人なき未知の風土・異文化・異言語の下で奴隷に等しい生活を乗り越えた。初めての自然環境と格闘し続け不十分ながらも食糧を確保し、産婆もいない出産から野獣や病気とも対峙。夢を抱いて移住した日本の23倍余の大地で独立を果たすため、自分の農地や居住地、職業など己の人生選択を僅かな自分の知識と情報で決めてきた。苦労を重ねた長い歳月を経て今ではストレスのない明るい、大らかなブラジル社会で元気に長寿を謳歌しながら、親と老人を尊敬し大切にするブラジルの地で、家庭でも社会においても存在感のあるシニア生活を満喫。現在は心を満たす至福の日々を送っている!

経済不況と閉塞感に苛まれる超保守的な日本社会にあって、ブラジルで見た笑顔があり、心を満たす社会こそ我らDF会員の目指すところではないだろうか?

60歳にして初めて自分で選択した大学院とボランティア人生を取り上げて3大新聞が報道。「社会的ポジションや経済性にも恵まれた世界からボランティア世界に飛び立つ」と。「本当の人生とは?」「今、私の本当の人生は晴れのち曇り。その後は‥‥?」。先はまださっぱり見えないが、ビジネスを通じて "まちづくり" に貢献し、笑顔で100歳を迎えられればと願うのみです。先輩諸氏に乞う叱咤激励と絶大なる応援を!

さいのわきかずひで ディレクトフォース会員 元講談社