2012/10/16(No135)
山之内 憲夫
理科実験グループの小学校高学年用テーマとして紙飛行機を取り上げてから1年半になります。この間に行った紙飛行機理科実験教室は33回、参加してくれた児童は延べ1000人を超え、人気テーマのひとつとなっています。
エアバス社の技術屋が手慰みに作ったエアバスA380紙飛行機というお手本はあったのですが、音速に近い速度で飛ぶA380を単純に紙飛行機にしてもうまく飛ばないので、子供達が飛ばしやすいように色々な設計変更をする必要がありました。通常の航空機設計では常識の風洞試験も複雑な計算も出来ないので設計変更と言ってもひたすら作って飛ばし、改良点を見つけ、また作っては飛ばすという原始的な手法で紙飛行機の設計をしました。このため、実際の飛行機のイメージを保持しつつ良く飛ぶA380紙飛行機の最初の形状を決めるまで100時間を越える設計工数が掛かりました。その後も飛びの良い形状を探し求めて設計変更を続け、4〜5回のモデルチェンジを行っています。A380に続いて、三菱航空機の協力を得て現在開発中の三菱MRJの紙飛行機を作り、全日空が最新鋭機ボーイング787を導入したのに合わせて787の紙飛行機も追加しました。787紙飛行機は、現在、全日空標準塗装、初号機特別塗装、ボーイング社塗装の3モデルを使っています。
![]() 各種モデルの紙飛行機 |
![]() 紙飛行機作成に 取り組む生徒たち |
![]() 南三陸町伊里前小学校にて |
授業の内容も子供達が風の起こす力を実感し、その実感を基に飛行機が何故飛ぶのかを理解出来るように改善を重ね、最近では教室の最後に「飛行機が何故飛ぶのか分かったと思う人は?」と問いかけると殆どの生徒が手を挙げることが多くなっています。
今までの紙飛行機理科実験教室で一番記憶に残っているのは昨年7月に南三陸町で行ったもので、伊里前小学校の体育館に伊里前小学校・名足小学校の4・5・6年生合計108名を集めて行いました。紙飛行機の製作と飛行コンテストを通じて、大震災にあった子供達が笑顔を取り戻してくれ、我々も勇気と元気をもらうことが出来ました。今後もこの子供達の笑顔を求めて紙飛行機理科実験教室を続けて行きたいと思っています。■
やまのうちのりお ディレクトフォース会員 元日本航空機製造、三菱重工
民間航空技術サービス、エアバスジャパン 現オライオンネットワーク