OVER80教育分科会 パネルディスカッション要旨
(100歳社会総合研究所)
- 日時
- 7月26日(水)10:00~12:00
- テーマ
- 幸せに感じる子どもたちを増やす小学校教育のあり方
パネリスト(五十音順):
- 岩岡 寛人 氏(鎌倉市教育委員会教育長、8月から文部科学省初等中等教育局)
- 手島 利夫 氏(江東区立東雲小学校長、江東区立八名川小学校長を歴任、元内閣府ESD円卓会議委員)
- 平尾 光司 氏(元専修大学経済学部教授、元昭和女子大学理事長、DF理事)
- 牧野 篤 氏(東京大学大学院教育研究科教授、DF学術顧問)
- ファシリテーター
- 保坂 洋(DF OVER80世話役)
- 場所
- 751スタジオ + Zoom Webinar
OVER80有志5名がリアルで出席、50名を超えるオンライン参加者を得て、4名の立ち位置の異なる教育の有識者であるパネリストから、熱のこもった示唆に富む素晴らしい意見交換がなされました。
【はじめに】
開始するに当たり、ファシリテーターの保坂洋氏から、本行事の目的と経緯について説明がありました。
創立21年となるDFには80歳を超える会員が100名程おります。そのメンバーでOVER80というチームを作り、30名程でオンライン懇親会を開催しました。気心が知れてきた頃、「我々の残された命を次世代のためにどう使うか」を考え、実行しようではないかということになりました。
そこで、実行すべきと絞られたテーマが「小学校教育への提言」です。
現在、有志11名で、今年中に上梓する計画を進めています。本日のパネルディスカッションの要旨は、貴重なご意見として掲載させていただく予定です。
上梓の目標は、「幸せな小学生を増やすこと」と定めました。契機となったのは、2020年ユニセフのイノチェンティレポートカード16です。「子供達に影響する世界
先進国の子供の幸福度を形作るものは何か」。そこに示されていたのは、日本の子供の「精神的幸福度」が38カ国中37位と最下位に近いという驚くべき評価だったのです。
このような状況を改善しなければならない。強い気持ちが沸き上がりました。
このような背景の下、平尾氏のご尽力で、本日、素晴らしい4名の識者の方々にご意見をいただく機会を得ることが出来ました。
【パネルディスカッション要旨】
牧野篤氏の基調講演で、第1ラウンドがスタートを切りました。
テーマは、「近代学校制度の原理 学校を持つ社会(近代産業社会)の特徴」です。
昭和から令和までの社会を振り返り、従来の⼯業社会に適合した教育から、予測が難しいポスト⼯業社会への転換期を迎えた今、従来の価値観に囚われない新たな考えで切り拓く必要があると熱く語られました。
岩岡寛人氏は、「教育を社会に開く 鎌倉市の学校教育の挑戦」と題し、ご自身が先頭を切って実施した改革について話していただきました。スクールコラボファンドという、ふるさと納税の仕組みを活用したクラウドファンディングで新たな数々の実践を行った事例など、興味深いお話が満載でした。
手島利夫氏は、「小学校教育 幸せな小学生を増やすために」と題し、校長時代に現場の壁を打破して実践した事例は、現場を経験したものでなければ知り得ない貴重なお話をいただきました。「こどもの学びに火をつける」大切さを強く訴えられ、現在取り組まれているESD教育「Education for Sustainable Development (=持続可能な開発のための教育)」について熱く語られました。
平尾光司氏は、日本の教育制度の変遷を述べられ、今一度原点に立ち返って教育の意義を見直し、海外の教育の良い所は取り入れて、従来の選別、輪切り、生徒の学力での序列化の脱却、生徒の個性の評価を進めることが大切と熱く話されました。
第2ラウンドは、パネリストがお互いに刺激を受け合っての質疑応答、意見交換が活発に行われ、2時間の終了時刻があっと言う間に来てしまいました。
文科省、教育委員会という立場の岩岡寛人氏、現場の校長を務め実践された手島利夫氏、実業界と教育界の両面で活躍された平尾光司氏、教育学者の牧野篤氏と、立ち位置が広く、しかも深い、異なるパネリスト達のご意見は、示唆に富む貴重な糧となりました。