第159回DF経済・産業懇話会開催「日本産業は何を目指せば生き残れるか」

カーボンニュートラルと化学産業

2024年5月22日
開催日
2024年4月24日(水)14:30~16:35
場所
スタジオ751 + Zoom
講演
「カーボンニュートラルと化学産業」
講師
福田 信夫 氏 三菱ケミカルグループ 取締役、日本化学工業協会 会長
参加者
38名

趣旨

今回は三菱ケミカル取締役で日化協会長の福田さんから、化学産業の現状の課題につき、カーボンニュートラルの視点からお話を頂いた。日本の化学産業が川上では競争力がなく、川下の機能化学品で生きる中、大口のCO2排出産業としてどのような課題に取り組んでいるのか興味ある話題であった。活発な質疑と懇親会でも延長した討議が続けられた。

また、赤堀さんから会費と会の取り進めについての現状にコメントがありました。

講演資料

カーボンニュートラルと化学産業(会員限定、転用禁止)
講演資料 (会員限定、転用禁止)

主な質疑

Q
ScopeⅢの割合が大きい。耐久財と消費財との比率は判るのか 消費者の認識が大切
A
数値はない、形になったものはリサイクルができる
プラスチックのリサイクルは主にPET、他のプラはリサイクルが難しい
三菱ケミカルでは鹿島の事業所に、回収プラ2.5万T/Yの 設備を投資
Q
プラの回収をどうしているのか 一般的なプラは塩ビなどの混合物
A
回収分別の会社に頼み、分別したものを購入している 消費者で分別は困難
Q
プラのリサイクルには金がかかる 廃棄プラを途上国に輸出しそこで必要なものだけを取り出し廃棄、海洋汚染などにつながる
プラのリサイクルより熱回収で十分ではないか
A
CO2の排出と気候変動を考えると、やはりサーマルリサイクルは止めるべき方向
世界で足並みをそろえる必要がある
Q
CO2と気候変動の問題はかねてよりあるが、無駄なことかもしれない CO2削減のコストと地球温暖化はバランスするのか
A
1.5℃の上昇が地球に与えるダメージと、これを防ぐコストとの兼ね合い
Q
それを感じていない人が多い
Q
COPの世界で推進 やらざるをえないとの認識 しかしグローバルサウスは成長優先
A
難しい課題 しかし科学的根拠も進んでいるがコンセンサスはできていない 地球温暖化でどの程度生活に影響が出ているのか何となくわかっていても危機についての実感が乏しい
Q
生態系を変わっている現実を見ればわかるのだが
Q
話題が違うが、世界の中での日本の競争力はどうなるのか
上流は競争力がない、下流で戦う しかし、中国ロシアなどはいずれ追いついてくる
どうすればよいのか
A
日化協では3カ月ごとに記者会見し現状説明
川上は厳しい しかし全体としては機能商品が強く利益率も上位30社の平均で8%の利益率がある
Q
鉄鋼産業でカーボンニユートラル実現不可能 化学産業も実現性はどのくらいの確率があるというのか
A
NH3やH2のコストにかかっている
Q
H2現状では100Y/m3これを20円まで下げる目標というがブレークスルーが必要 8円位でないとペイしない
日本では縮小均衡で産業は日本から出ていく 罰則のない発展途上国に世界はどうするのか、日本の競争力はどうなるのか
Q
原油の埋蔵量には限界がある 金属は有限が判っている
A
原油は当分ある
Q
ロシアや中国は原子力に大きく投資して、対策ができているという
産業界は振り回されているのではないか
A
川上では勝負しない
A
エチレンなどは国内需要分しか作らない またエチレンとしてではなくそれを加工して付加価値を付けたものを売る
エチレンなどは中国、中東などで投資が進んでいる
Q
日本に上流がなくなるとマテリアルは困るのだが
Q
宇部興産では早くからプラ回収やガス化を進めてきたが、結局止めてしまった
原料の廃プラが集まらないからだ 地域性があるのではないか
A
都会でないと廃プラは集まらない 条件が厳しく社会全体で取り組まないといけない
Q
補助金潤っているところもある
A
補助金頼みでは継続性がない
Q
日化協の役割として、政府への働きかけだけではなく、一般消費者や、他の産業への働きかけなどをやっているのか
A
基本的には政府を通じて行っている
政策を提案 日化協は定期的にMETIと意見交換を行っている
Q
上流は競争力がないなら捨てる考えはあるのか
A
上流では勝負しない、2次加工意向をやる 加工品でも海外でできるならやめる
Q
エチレンセンターを止めることはないのか
A
国内需要に見合うに見合う400万tまでは残るのではないか
Q
H2やNH3を作るのにCO2は出る 半導体のSiを作るのにも硅石から取り出しで多くのCO2が出る 計算上のバランスはしているのか
A
計算根拠の保証が必要
会計では統一ルールがあり、計算は根拠が保証されている
しかし、サステナビリティ―の計算にはそれぞれの計算に保証がない 信頼できない
今後、これらサステナビリティに関して保証の仕組みが構築される
Q
NH3、H2などどこから来るのか PVの電気で水の電気分解なら良いが
Q
PVと言ってもシリコンウエファーが必要
Q
バイオプラが色々あったが成功率はどのくらいか ゴールはどこか
A
現在の市場ではバイオプラは1%以下
収支はやっとトントン位かマイナスか 機能は変わらなく値段だけ高い イメージで特殊な用途にのみ使われている
以上(浅野 応孝