DFと東大高齢社会総合研究機構とのプロジェクト連携
フレイル予防で前進、DFは東大要請受けオブザーバー参加を表明へ

地域デザイン総合研究所
2024年4月8日

超高齢社会時代に対応する新社会システムづくりを、との問題意識でディレクトフォース(DF)は、東大高齢社会総合研究機構(IOG)との間でプロジェクト連携の道を探ってきましたが、IOGリーダーの辻哲夫氏(元厚労省事務次官)から2024年1月18日の会合で、健康長寿社会に向けての重要テーマであるフレイル(心身の虚弱)予防に向け、DFにはオブザーバーの形でぜひ協力を仰ぎたい、という申し入れがありました。

その際、辻氏は、東大IOGが中心になって神奈川県など自治体や社会福祉協議会、企業に働きかけて「フレイル予防推進会議」を立ち上げ、住民参加のフレイルチェックを軸にした国民運動をめざしていること、DFは会員健康調査を踏まえた本「DF流健康長寿の知恵」でこの分野での知見を持っておられるので、ぜひサポートを、という呼びかけでした。

DF健康医療研、超高齢社会問題研合同会議で「異存なし」、今後はIOGと勉強会も

結論から先に申し上げると、このフレイル予防への取組みに関して、DFの健康医療研究会(江村泰一代表)と超高齢社会問題研究会(牧野義司世話役・代表)のメンバーが、3月11日午後の合同会合で意見交換を行った結果、最終的には東大IOGとプロジェクト連携する方向付けに異存はなく、今後、オブザーバー参加して、まずは勉強会の形で互いに問題意識を高めていこう、ということになりました。

そこで、フレイル予防プロジェクトのDF側リーダーの江村氏が今後、東大IOGに正式にオブザーバー参加を伝えると同時に、もしオブザーバー参加となった場合、どういったかかわり方、協力の仕方があるのかを協議すると同時に、問題意識を共有するための勉強会の進め方なども詰めていく予定です。
フレイル予防問題を契機に、間違いなく両者が連携に向けて前進したといえそうです。

合同会議には17人が積極参加、リーダーの江村氏から東大IOGのプロジェクト報告

3月11日の合同会議参加メンバーは17人。DF本部会議室とオンラインによるハイブリッド方式の討議で、以下が参加者です。(敬称略であいうえお順)赤堀智行、岩佐俊明、江村泰一、嘉屋正道、見目久美子、小林慎一郎、櫻井三紀夫、鈴木信男、高橋宣治、立石裕夫、得丸英司、中尾誠男、平井隆一、藤村峯一、牧野義司、真瀬宏司、宮崎泰雄

合同会議では、リーダーの江村氏から東大IOGのフレイル予防への取り組み、とくに住民主体で予防などを行う「東大方式」の内容、参加自治体が神奈川県や東京西東京市など広範な広がりを見せつつあることの報告、そしてオブザーバー参加がどういった形になるのか、東大IOG側の考えに関しての説明がありました。それらを踏まえDFとしては、参加のメリット、デメリットに関して今後、詰めていく必要がある、との報告でした。

DF会員への周知に課題指摘の一方、オーラルフレイル予防で健康長寿を、との声

ただ、健康医療研究会が事前に2月8日に開催した会合では、DFが取り組むフレイル予防に関しては、会員への周知徹底という重い課題があり、DFとして主体的にかかわるのは難しいのでないか、むしろ自治体や地域社会、さらには会員の出身企業への「つなぎ」の役割を果たした方がいいのでないか、との意見が出ました。

その一方で、同じ健康医療研究会のメンバーの中には「フレイルの概念をより広くとらえることが重要だ。たとえば食べこぼし、ろれつが回りにくいなどの症状がもとで体力的、心理的にフレイルになっていく恐れがあるため、オーラルフレイル予防を進めるのも健康長寿につなげる重要策だ」という意見もありました。
また、3月11日の合同会合で、超高齢社会問題研究会メンバーから、自治体への連携の働きかけに関して、DF相模原支部で相模原市とのネットワークが出来ており、これらを通じてフレイル予防で連携を模索することは可能だ、との興味深い問題提起もありました。

これらのさまざまな意見を踏まえ、DFとしては最終的に東大IOGとフレイル予防で連携する方向付けに異存はない、との形で意見集約となり、プロジェクトが動き出しました。

高齢者の生きがい就労問題めぐり地域社会への定着、企業の地域貢献で議論

このフレイル予防への取組み問題に続き、3月11日の合同会合では、牧野から、高齢者の生きがい就労をどうするかが社会問題化しつつあり、DFとしても、企業に働きかけて地域社会貢献につなげるプロジェクトにすることも検討課題、との問題提起を行いました。

具体的には、東大IOG特任教授の秋山弘子氏から「高齢者の生きがい就労を地域社会で定着させる仕組みがつくれたら、日本は幸福な長寿社会モデルの先駆け国になれる」との指摘があったことを紹介し、DF会員が出身企業に働きかけて、企業に賛同を得られ仕組みづくりが出来上がれば、企業の新たな地域貢献になるのではないだろうか、と述べました。

この点に関しては、IOGの辻氏も以前のDFとの会合で、同じような問題意識で「DFの皆さんがアクションを起こして、出身企業のみならず、いろいろな企業に対し、人生100年時代に対応して、まだまだ働きたい、という高齢者の人たちの就業の場への道筋をつくっていただけばありがたい」と述べています。

年金収入では不安あり働きたい、との声に対し「政治や行政が方向付けを」が大勢

牧野からは今回の合同会議で、超高齢社会時代に対応する新社会システムの中核は、高齢者の生きがい就労のアクティブ化、とくにハローワーク型就労から脱皮した新モデルづくりがカギになる、と問題提起しました。 その際、複数の高齢者男性の話では、「年金収入だけでは老後の生活不安があり、年齢に関係なく、元気なうちに働けるだけ働きたい」という声が強いこと、しかもハローワークの求人は守衛などの単純作業で、時間給が安く てやりがいがないことから、地域社会で共助につながる地域との連携で活動したり、また意欲的に働ける仕事などがほしい、といった声が出ていることを挙げ、医療や介護に頼らない元気な高齢者づくりの仕組みづくりが出来ればベストだ、と述べました。
しかし、DF会員の間では「出身企業などに働きかけても、高齢者就業の問題に関しては総じて消極的だ。むしろ、それは政治や行政が方向付けする問題だ」と指摘する声が大勢で、3月11日の合同会合でも議論に広がりが出ませんでした。

新社会システムづくりで東大IOGと交流へ、DFも外部専門家招き勉強会を計画

このあと、合同会合で、メンバーの中から「超高齢社会問題研究会は、超高齢社会時代に対応した新たな社会システムづくりをめざす、という問題意識でいるようだが、具体的に、どういった活動を想定しているのか」という質問がありました。

この点に関して、牧野から「東大IOGは、高齢社会総合研究機構の名前どおり、今後の超高齢社会時代に対応した社会システム、制度設計を研究されており、DFとしてもフレイル予防での連携とは別に、この社会システムづくりで情報交換、議論交流などを続けていければ、と考えています。また、超高齢社会問題研究会としても、今後、外部の専門家を講師に招いて、超高齢社会時代のさまざまな課題に関する勉強を続け、問題意識を高めていく計画です」と報告しました。

DF執行部に東大IOGとの連携承認を要請、地域デザイン総研にも連携メリット

以上が、3月11日の合同会議の報告です。当面、DFとしては、江村氏を中心に、東大IOGとの間でフレイル予防の勉強会を行う方向で活動していく予定です。

なお、東大とのさまざまな連携に関して、DF執行部としても承認していただく必要もあるかと考え、この日の合同会議に参加いただいたDF事務局長の高橋氏にもDF執行部で検討を願いたいと伝えました。
DFはシンクタンク機能を持つ地域デザイン総研を持っています。今後、フレイル予防への取り組みでDFと自治体や企業との連携が具体化したり、また生きがい就労でDFが企業を巻き込んで企業の地域貢献システムづくりに進展があれば、地域デザイン総研としてもさまざまな関与が見込めます。同時に、東大IOGとの連携メリットもプラスに働く可能性があります。

牧野 義司