私のサッカー遍歴

メンバーズ・エッセイ
撮影:神永 剛

2024年6月15日 (No. 415)
岡本 純
岡本 純

1993年5月15日 a.m. 8:00、場所は国立霞ヶ丘競技場。前日の大雨が嘘のように空いっぱいに青空が広がっていた。スタンドでは前日出来なかった観客用の配布物のセッティングがアルバイト総動員で始まっている。ピッチ上では広告看板も搬入され、オープニングセレモニーの準備も着々と進んでいる。記念すべき「Jリーグ開幕」。そのハレの日の裏方の責任者として立合えた事に私は無上の喜びをかみしめていた。サッカーを愛する一人として……。

「スポーツを愛する多くのファンの皆様に支えられまして、Jリーグは今日ここに大きな夢の実現に向けてその第一歩を歩みだします」

「オープニングセレモニー」でのJリーグ初代チェアマン川淵三郎の開幕宣言である。このような「シンプル」で「短く」、賓客の挨拶が全く無いセレモニーは初めての経験であった。こうしてJリーグは新たなプロスポーツビジネスの歩みを始めることになる。ちなみにこの「宣言」は翌日の朝日新聞の「天声人語」で全文紹介された。

格闘技宣言

私自身がビジネスとしてサッカーに携わることになったきっかけは1983年日本サッカーリーグ(Jリーグの前身=通称JSL)の20周年キャンペーンでした。競合プレゼンの結果、キャッチコピーは「格闘技宣言」、ビジュアルは「釜本選手のオールヌードポスター」に決まりスポーツ競技団体としては画期的な企画とし当時は広告効果も数億円とも報道されました。

このキャンペーンでのご縁がきっかけとなりその後Jリーグの設立準備に携わることになるとは当時は夢にも思っていませんでした。特筆すべきは、広告代理店が関与することにより当時のスポーツ団体にしては、珍しく緻密な「マーケティング戦略」を実践したという事でした。まず、当時のJSL(日本サッカーリーグ=Jリーグの前身)の選手・指導者へのプロ化に対してのアンケート、加えて、河原で草サッカーをしている3,000人余りの人たちへの調査を実施。更にアメリカの4大人気スポーツNBA/MLB/NFL/NHLそして大相撲のビジネススキームの調査、また規約に関しては、 プレミアリーグ(イングランド)、ブンデスリーガ(ドイツ)へのヒアリングを行いました。プロモーションとしては新聞広告での読者に対してのご意見募集に加え青木 功(ゴルフ)・千代の富士(相撲)・武 豊(競馬) など当時第一線で活躍していたプロアスリートの皆さまからに応援メッセージを頂きました。新聞広告でのご意見募集では 桜井よしこさん(元NTVニュースキャスター)らを起用し「TV放映を増やしてください」➡「面白かったら取り上げます」。 芦屋雁之助さん(放浪の画家山下清)は ➡「10クラブのホームタウン以外の場所での試合開催希望」➡「どこへでも行くんだな」、そして三波 春男さんには「ファンサービスを充実してください」=「お客様は神様です」といった読者からの要望が多かった内容を順で「アンサー告知」というものを実施しました。

ご意見募集広告(千代の富士)
ご意見募集広告
(千代の富士)
 
1993年5月15日 開幕当日告知(三浦知良)
1993年5月15日
開幕当日告知
(三浦知良)
アンサー広告(芦屋雁之助 = 山下清)
アンサー広告
(芦屋雁之助 = 山下清)
 

また告知以外のプロモーションとして、全クラブの選手・監督が一堂に会したユニフォーム/応援グッズの発表会・ファッションショーなど枚挙にいとまがありませんでした。
2023年3月、Jリーグの誕生から30年を迎えました。現在DFで講義をしている学生・生徒たちにとってJリーグはもう日常の生活の一部かもしれません。

小学校の5年生からサッカーを始め、中学、高校、大学とサッカー部に在籍し、博報堂入社後も営業部門配属の後、スポーツ・サッカーに長くビジネスとして携わることになりました。後に関東学園大学で教鞭を執っていた時も「スポーツマネジメント・マーケティング・ビジネス」の講座を担当しました。古希に手が届かんとする現在も子供たちにサッカーの楽しさを伝えています。まさに「サッカーオタク」と言っても過言ではないのかもしれません。

岡本 純

そんな私がスポーツと付き合っているときに常に意識していることが有ります。
スポーツ本来の意味は「楽しむもの!愉快に遊ぶもの!≒ 気分転換」という事です。「何かのためにスポーツをする、観る、支える」のではなく純粋に「スポーツをする、観る、支える」こと自体を楽しむ、喜ぶ、大事にするという事なのです。(トップアスリートたちは若干違った観点があるかもしれませんが)この本来の意味を思い出して、ウマイ・ヘタ、成功・失敗、勝敗など気にせずに、思うがままに身体を動かすこと自体を楽しみ、気分転換をしてみてください。

以上

おかもと じゅん(1404)
(元 博報堂)
(授業支援の会)