定年(前)女子塾

メンバーズ・エッセイ
撮影:神永 剛

2024/3/1 (No. 408)
児玉 徳子
児玉 徳子

この度、DFに新規入会しました児玉徳子です。1984年に、日本経済新聞社のビジネス部門に四大卒女子1期生として入社しました(記者採用は1985年から)。1984年は雇用機会均等法施行以前でしたので、多くの企業が女性採用に門戸を閉ざしていました。幼稚園から男女共学で育ってきた私にとって、就職先がほぼほぼない!という状況は大いなる驚愕でした。幸か不幸か日本経済新聞社に入社でき、かつ、同社で男女の差別なく仕事ができ、きわめて快適な会社人生を過ごしました。

日本経済新聞社では、一貫してビジネス部門におりましたが、同じ会社にいたとは思えないほど、いろいろな仕事をしました。①新聞広告の法人営業、②広告業界向けPR誌『日経広告手帖』のライター・編集者、③マーケティング調査、④今はなき決算公告などの法定公告管理、⑤投資家向け広報(IR)のコンサルティング、⑥日本経済新聞社のインターネットビジネス NIKKEI NET(日経電子版 https://www.nikkei.com/ の前身)立ち上げ、⑦インターネットビジネス開発、⑧インターネット広告営業、⑨新規ビジネス開発、⑩日経の中文サイト『日経中文網』 https://cn.nikkei.com/ の立ち上げ・ビジネス開発、⑪ CNBC Asiaとのビジネス開発、⑫中国ビジネス開発、⑬統合報告書アウォード企画・推進 などなどなど。本当にいろいろなことが経験でき、仕事は自分でつくる!を体験できた刺激的な日経時代でした。

ですから、このまま日経で仕事を続けたかったのですが、仕事量は全く変わらないにもかかわらず55歳役職定年で給料2割カット、60歳にはさらに給料が減らされ、同じように仕事ができなくなる!という定年制度を前に、やむなく退職を選択することとしました。母の介護というタイミングも重なり、58歳、2020年3月、コロナとともに退職しました。ですが、仕事は体力の続く限り続けたいと思っており、自身の株式会社で、金融系コンテンツを中心とした広告、マーケティング、広報・IR(投資家向け広報)、研修、ビジネス開発などの仕事をしております。

これからの人口減少時代、労働力不足が言われる中、定年制度の存在がどうしても許せず、同じ気持ちでいた女性3人と2021年3月にFacebook内に「定年(前)女子塾」というコミュニティーを立ち上げました。現在、5,300人のメンバーがいます。

雇用機会均等法第一世代の女性たちが60歳を迎える今、定年を迎えた女性の先輩が少ない中、同じ会社で働き続けた方がいいのか、転職した方がいいのか、全く別の仕事についた方がいいのか、社会貢献活動をした方がいいのか、はたまた自由を謳歌し趣味にいそしんだ方がいいのか、大いに迷っています。人生100年時代になり、多様な生き方が模索されていますが、企業で働く女性の環境は旧態依然です。私たち働く女性が、いつまでも、自分らしく、生き生き働けるよう、仕事のこと、お金のこと、家族のこと、新しいチャレンジのこと、これからの人生のことを自由に語り合える場として、定年(前)女子塾を立ち上げました。(Webサイトは https://womenchallengenetwork.com/

深田晶恵氏
安原ゆかり氏
行武知子氏

設立メンバーは、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏、元日経マネー・日経ウーマン編集長の安原ゆかり氏、同じく日経BP社編集者の行武知子氏です。フリーの深田氏を除いて、他の3人は60歳を迎え、自分事として定年に遭遇しています。

2023年12月、申し合わせたように、大阪、東京、札幌で定年(前)女子塾・オフ会が開催されました。管理人が主宰したものではなく、参加メンバーによる自主的な声掛けによるものでした。皆さま、びっくりするほど元気よく、積極的に情報交換されていました。約半分くらいの方が、ご自身の仕事を立ち上げられていて、それも、今までなかったような、ニッチなフィールドで活躍されていて、強いパワーを感じました。その一方、会社の中で差別を受けたり、部下からつるし上げられたり、女性管理職を増やすために会社から指示されて管理職になったが、社内から非難されたりとか、苦しい境遇の方もいらっしゃいました。「どこにも相談できず今までひとりで悩んでいたが、今回オフ会に参加し、同年代の女性たちと話すことでき、とても元気になりました」、とおっしゃっていました。私自身は、「定年」という制度に反発し、なんとか制度を変えていこう、と定年(前)女子塾を立ち上げましたが、そうではなく、同年代の働く女性が自由に語り合える、そんな「場」として、本コミュニティーが求められている、と気づきました。

今でこそ、ダイバーシティー&インクルージョンと、企業の中で働く女性の重要性が謳われるようになりましたが、私たちシニア女性たちはその恩恵を受けることもなく、多くの方が厳しい環境で働いてきました。それでも元気に明るく生きていこうとする定年(前)女子塾の女性たちの真の声を届けることこそが、私たち設立メンバーの使命だと感じています。DFの中でもいろいろな形で情報交換していきたいと考えております。

以上

こだま なるこ(1445)
(元日本経済新聞社 現I&WパートナーズCEO)