オーケストラオタクのコンサートホール巡り

メンバーズ・エッセイ
撮影:神永 剛

2023/7/16 (No. 393)
荻野 好正
荻野 好正

1970年大阪万博の時に、訪日していた海外オーケストラを聴く機会があり、そのうちの一つがバーンスタイン指揮ニューヨークフィルのマーラー9番だった。当時大学2年生の自分にはとても新鮮で、それ以来オーケストラと作曲家マーラーに魅せられ、人生1500回のコンサート視聴を目指しています。あと300回ぐらいで達成か。

海外オーケストラ訪日公演の値段の高さと、国内オーケストラのレベルが格段に高くなったことから、最近は在京、地方のオーケストラを聴きに行くのが殆ど。勿論、同じ曲を違ったオケ、指揮者で聴くのも楽しみではあるが、いろいろなコンサートホールを巡るのも楽しみ。欧米も含めて多分70~80箇所のコンサートホールを巡って来ていますので、その辺りのお話をさせていただきたいと思います。

東京ってコンサートホールが世界で一番たくさんあるような気がします。国営、都営、区営、民間といろんな運営の音楽ホール。正確な数はわかりませんが、私の行ったことのある所だけでも大型ホールで20、室内楽のホールで10以上になります。音の響き方の違いでそれぞれに良し悪しがあります。また、同じホールでも、座る場所によって音が全然違ってきます。私の好んで聴く座席は、ステージの真横もしくは斜め前の2階席からオーケストラと指揮者を見ながら聴く、またステージの後ろから指揮者の正面をみながら聴くのが大好きです。席の価格も安いので、一挙両得。残念ながらこの楽しみ方ができるホールは結構限られてきます。私の好みは、東京のサントリーホール、東京芸術劇場、ミューザ川崎、大阪の建て替えになったフェスティバルホール、フェニーチェ堺など。逆に苦手なホールは、NHKホール、席により良し悪しがはっきりするのがオーチャードホール、東京文化会館ですかね。ステージ正面から聴くのが音のバランスだとか反響で一番良いと言われる方が多いのですが、私は指揮者のお尻と弦楽器の一列目だけしか見えない座席よりも、指揮者、各演奏者がどんな表情でどんな音を出すのか、オーケストラは聴くものではなく、見るものだとよく周りに言っています。

先日、ミューザ川崎コンサートホールで、ステージ横の3階1列目の座席を購入しました。東京交響楽団のマーラー6番。いつもは2階で聴くのですが間違えて3階の座席。最悪、と思って座ってみると上からステージを覗くような感じ、これは失敗と思っていたら、演奏が始まると音が下から湧き上がってくるような、いつもとは違う異次元の世界。これには驚きました。こんな聴き方もあるのかと、たまにはこの席もまた行きたいと思った次第。先日も、東京都交響楽団の演奏でマーラー7番をサントリーホールで聴き、数日後に同じ演奏家・プログラムを大阪のフェスティバルホールで聴きにいきました。素晴らしい演奏でどちらもとても良い音響ですが、音の質が全く違った。このような楽しみ方も、結構マニアックですが楽しいものです。

地方にもいいホールがたくさんあります。まだ行けていないところも多いですが、今まで行った中では、西宮にある兵庫県立文化センター、名古屋にある愛知県立芸術劇場などはおすすめ。

海外駐在時や出張で行ったところで、時間がある時に欧米のコンサートホールもたくさん巡りました。やはり一番素晴らしいと思ったのが、ニューヨークのカーネギーホール、ステージの一つの点から音が湧き出てくるように聴こえてきます。シカゴのオーケストラホール、クリーヴランドのセベランスホール、ロスのディズニーコンサートホール、フィラデルフィアのVeriosonホールも良い思い出が残っています。何よりも素晴らしいと思ったのが、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場。なんと5000人ほどの収容人数ですが、どこで聴いても素晴らしい音響です。

ウイーンフィルやらベルリンフィルの来日公演に大枚をはたいて聴きにいくのも良いでしょうが、レベルの上がった日本のオーケストラを、いろいろな音響特性のあるホールで異なった音を楽しみながら堪能する。これもまた素晴らしい体験ができると思います。

以上

おぎの よしまさ(1346)
(伊藤忠商事、曙ブレーキ工業)
(現在は中小企業・スタートアップ企業の支援活動など)