山﨑雅史会員(804)からクルマの電動化についての世界の動向と日本の立ち位置についての動画レポートが届きました。いつもながらの源情報に基づく精緻な解析には敬服します。以下、山﨑さんのコメントです。
欧米では、3万ドルを切るEVを投入して鈍化しているEVの普及を立て直そうとの動きが起きつつあります。テスラは3万ドルを切るEVにステアリングもブレーキもない完全自動運転という付加価値をつけて、頭打ちとなっている自社のEV販売を立て直そうとしています。一方、政府の強力な支援の下でEVとPHVからなる新エネルギー車の普及に邁進している中国では、PHVがEVに勝る勢いで増え続けています。新車販売の9割近くがEVになっているノルウェーに続く電動化先進国のスウェーデンやオランダでは、HVとPHVの普及の土台の上にEVが普及しています。
一見、混沌とした状況にあるように見える今こそ世界の主要市場で起きている電動化の流れを高い空から鳥の眼をもって全体を俯瞰し、先入観や過去の成功体験にとらわれない自由な視点で考えなおす必要があると思います。
現時点で入手可能な今年9月までのデータを使って中国、米国、欧州市場の状況をまとめてみました。また、この機会に世界における日系自動車メーカーの立ち位置についても分析してみました。その結果、浮かび上がるのは中国でBYDを中心に普及しているコストパフォーマンスに秀でたPHVの存在です。海外戦略においても中国勢は今EVで攻勢をかけていますが、海外の市場でEVの販売が立ちゆかなくなればすぐにPHVに置き換えて攻勢を続ける状態にあると考えられます。
今、クルマの世界生産でトップの座にある日系自動車メーカーのシェアは、テスラや中国勢による生産増大で現状のままではこれから低下の一途をたどるのは避けられない状況にあります。データを解析してたどりついたのは、今こそ過去のHVの成功体験にとらわれない自由な発想で低価格で信頼性の高いPHVを開発し、それを中国市場に投入して磨きをかけるチャレンジが必要ではないかと思います。
32分の動画になります。日本の自動車産業の現状と将来について考えるうえでご参考になれば幸いです。
なお、「モビリティを考えよう」のコーナーでは過去にアップロードした以下の動画もまだ見られる状態になっています。PDFが必要な方はご希望の題目を連絡いただければお送りいたします。
- 2022年9月2日「クルマと自動車産業 過去・現在・近未来」
- 2022年11月13日「電気自動車は本当にCO2を削減するのか?」
- 2022年11月24日「テスラとイーロン・マスク」
- 2023年1月1日「自動運転の歴史と原理、現状」
- 2023年2月10日「データで見る電動化の流れの現状」
- 2023年3月23日「中国BYDと王伝福」
- 2023年5月4日「2022年電動車動向実績と今後」
- 2023年5月20日「2022年自動運転の現状と今後」
- 2023年6月27日「激動の自動車産業 加速する覇権争い」
- 2023年8月25日「データで見る電動化への推移 2023年夏」
- 2023年11月3日「データで見る電動化への推移 2023年秋」
- 2024年1月24日「データで見る電動車への推移 2023年の振り返り」
- 2024年2月14日「EVが直面するひとつの壁 低温下での高速走行」
- 2024年3月6日「欧州にみる電動化のプロセス 大市場ではHVが当面の現実解」
- 2024年3月28日「電動化率、充電車率が示す欧州の動向 一目で進捗レベルが分かるまとめ方の提案」
- 2024年4月13日「電動化率と充電車率のマップでみる世界の主要市場 一目で分かるHVがメインの市場」
- 2024年5月9日「分析BYD“爆速”開発と品質のレビュー」
- 2024年6月6日「分析 中国自動車市場 EV減速、PHV加速の流れ」
- 2024年7月22日「世界主要市場のクルマの電動化の進捗状況 2024年6月時点」
- 2024年8月13日「SDV 販売後も進化するクルマ」
- 2024年9月1日「分析BYDの品質 車質網での評価」
- 2024年9月29日「ファーウェイが中国で狙うスマートカー覇権」
- 2024年10月31日「クルマの電動化の今と日系自動車メーカーの立ち位置」
DFホームページの「活躍するDF会員」ページにも、動画のほかに、一部PDF資料も掲載されていますので、ダウンロードできます。PDFがリンクされていない資料は、山﨑さんにお問い合わせください。
山﨑雅史会員: masafumi_yamazaki@nifty.com