山﨑雅史会員の新着レポートです。中国政府の後押しもあり、ファーウェイがスマートカー産業の市場で自動車産業への協業、参入が進行しています。山崎さんは民生技術がIT技術により軍事転用されることにも触れています。 以下、山崎さんのコメントです。
官民一体となって「自動車強国」にむけて突き進む中国では、実質的にEVとPHVからなる新エネルギー車が新車販売の半分を占めるまでになるとともに、EVよりもコストパフォーマンスのいいPHVが増え続けています。そして10万元から20万元(日本円で約200万円から400万円)の間で品揃えのいいメーカーが市場を支配する構図となっています。
そんな流れのなかで、最近、消費者の間には価格は高くても高度な運転支援や自動運転機能と共に多機能のインフォテイメント機能が備わったスマートカーを求める動きが起きています。通信機器メーカーとして世界トップシェアを誇る中国ファーウェイは、この新しい流れの中で地場自動車メーカーと協業し、様々なブランドのスマートカーを市場に出し始めています。
「自動車強国」への道筋を確固たるものにするため、中国政府は運転支援や自動運転の技術の普及も国家戦略に据え、2030年までにレベル2とレベル3とを合わせて新車比率の70%に、さらにレベル4を20%とする数値目標を掲げています。ドローンで世界大手のDJI発のスタートアップであるDJIオートモーティブが開発した廉価版の運転支援システムとともに、ファーウェイのスマートカー分野における存在感は中国において今後大いに高まるものと思われます。
ただスマートカーとまで行かなくてもクルマが常時コネクテッドの状態になっていることによる不安がクローズアップされています。日本にもすでにコネクテッドの機能を持った外国製のクルマが入ってきていますが、もし製造国の政府が悪意を持ち、製造したメーカーが政府の命令に抗えないような社会体制下にあれば、クルマは製造した自動車メーカーのOTA(Over The Air)によって所有者の知らない間にソフトが書き替えられ、制動機能や操縦機能を不能にすることができます。更にはEVであれば搭載してあるバッテリーに熱暴走を起こさせることも可能となります。すなわち、クルマは容易に兵器になりうるというリスクを持つようになり、これからのクルマは製造国のスクリーニングが必要になる時代になっていきそうです。それはスマートカーが第三者によってハッキングされ制御不能になるというレベルをはるかに超える地政学的な危険なレベルになりうるということです。
横道にそれてしまいましたが、今回、「ファーウェイ連合」による中国でのスマートカーの動向の全体像をまとめてみました。これから益々目が離せない「ファーウェイ連合」の動きを理解するうえで参考にしていただければ幸いです。約30分の動画になります。 URLは以下の通りです。PDFも添付いたします。よろしければお使いください。(山崎雅史)