2021/08/01(No.346)
酒井 和幸
何事も偶然やきっかけから起こるのですが、結果から見ると必然と思えるから不思議です。ものづくりの会社で社会人生活のスタートし、様々な仕事をして卒業をした後に、会社のOB会である方からDFに入会しないかと声をかけて頂き、そして次のOB会も近づき気になり少し調べてみたのがDF入会へと繋がりました。ものづくりへのこだわりは人生の大半を過ごした環境からも当たり前に持っていましたし、この文化は継承すべきだとも思っていましたが、これから何が出来るか迄は考えていませんでした。「子供たちに理科実験を通じて理科好きになってもらう」という言葉が私に響き、何かが出来るかなという気持ちになりました。知識教育の弊害みたいなものを感じていたので、「実験」を自らしてもらうというポイントは貴重でした。発明、発見、開発において「知識」は不可欠ではありますが時に邪魔な存在になる事を経験し、「知識」偏重に陥らない子供たちの一助になるのではと少し大げさに考えたのです。
新規開発テーマ「熱」の実験に集中している児童たち
理科実験グループに入会しオリエンテーションから、先人の方々の奮闘により「活動の場の獲得」「豊富な手作り実験メニュー」「ボランティア活動の仕組」等が整備されていることを知り、とても驚きました。早速経験を積むための定員外参加から始めましたが、
毎月行われる「テーマ検討会」
月に1回のテーマ検討会でテーマの改良や新テーマが検討されます。この際反省会の比にならないくらいの真剣な討議が行われ、提案者は半ばサンドバッグ状態に置かれます。給料を貰っている時でさえ経験したことのないくらいのツッコミで、正直このリングには上がりたくないと思っていたのですが、何の因果かあるテーマを担当する羽目になり、無縁とはいかなくなりましたが、この洗礼を受けて子供たちの前に立ち実験を終えると、気のせいか子供たちの反応が以前と違うと感じたりするのは何故でしょうか?
顧客である子供たちの「顔」「声」「ふるまい」が何かを「揺さぶる」のだと思いますが、絶え間なく自己改善をして行こうとしているこのグループは一体何なんのだと思います。
コロナにより活動が大きく制限され最大の楽しみである「実験」の場も昨年春にはほぼゼロになったにもかかわらず、Zoomなどという武器を手にしてミーティングを続け、新テーマの開発やコロナ対策事項を標準化しそれに対応したテーマに改良を進めるなど、留まることを知りません。ようやく秋ごろからイベントの再開が始まり、老体ではありますが自前の対策を行いイベントに参加する喜びを感じ始めました。もちろん反省会の楽しみはおあずけです。変異ウイルスで再び開催中止の報が入り始めていますが、ワクチン接種優先の恩恵を受ける方も多く気持ちは前向きです。
家族に見守られながら熱心に実験に参加する児童たち
最近の事例を簡単に紹介しますと、イベントリーダーが開催前の注意事項を各参加講師に2~3回メールで知らせます。当日テーマリーダーは実験参加対象学年に応じた内容に標準版を見直し、必要であればZoomを開催し、事前に参加講師に実験の進め方とポイント・パワーポイントの内容を説明し、質疑応答により内容を見直したりします。最後に集合時間・場所の念押し(とても大事)して当日を迎えます。実験後反省会を行い次回に向け参考すると同時に、報告書他でグループ員と共有します。
これだけの手間暇をかけても子供たち全員に気持ちが伝わるわけではない事は皆さんよくわかっておられるのですが ‥‥ でも楽しいのです。
自分自身なぜ技術分野に進んだのか今でも確たるものは無いのですが、小学校6年生の夏の課題にクラスメイト2人が共同で有毒色素をペーパークロマトで分離し発表したのを聞き、「すごいことが分かるな」と強く感じた事が何かどこかで繋がっているような気がしています。万が一にでも子供たちの道探しのぼんやりした光の一つになってくれたらなと、そんな思いが楽しさを感じさせるのかもしれません。
さかい かずゆき(1092)
技術部会 理科実験グループ 元帝人