第156回DF経済・産業懇話会開催
『日本産業は何を目指せば生き残れるか』
~ 知られていない中小企業の実相と中小企業家同友会 ~
- 開催日
- 2023年11月4日(月)14:30~16:40
- 場 所
- DF会議室 Zoom
- 講 演
- 「知られていない中小企業の実相と中小企業家同友会」
- 講 師
- 平田美穂会員(1428)
- 参加者
- 28名
【概要】
平田さんは数ある全国組織の経済団体で初の女性事務局長として、中小企業家同友会全国協議会で活動してこられました。今回、日本の産業を足元から支えてきた中小企業につき、現状や課題、今後の在り方など、現場を知る立場からのお話があった。
懇親会も含め、多くの質疑もあり中小企業につき認識を新たにする会であった。
【質疑応答】
詳細は添付の資料を参照
質疑の抜粋
- Q:
- 人員不足の状態で外国人を使うことをどう考えるか、政府への要望などをしているのか
- A:
-
外国人労働者の受け入れは、製造業などで不可欠 一方技能実習生制度には批判もある
日本でもっと働きたいという外国人も多い 韓国を視察 韓国ではハローワークで採用可能 人材を出す国との2国間で協議している
日本はもっと間口を広げる必要がある 政策要望提言などもしている - Q:
- 同友会の会員やスタッフの数などはどのようになっているのか
- A:
-
会員は企業ではなく経営者個人
同友会の事務局スタッフは都道府県全国で約350人 8割は正規社員
全国協は12名
例会などは会員の自主運営で推進 - Q:
-
自分は大企業で働いたのち、2015年から中小企業に関わってきた。
商工会議所で(株)シケンの島 隆寛社長(徳島県中小企業家同友会代表理事)にお世話になった、それまで同友会の存在を知らなかったが、経営指針書が良かった。 - Q:
-
500万社あった中小企業が2016年で350万に減少、生産性が低いのか
強みのある事例がどんどん出て、優れたビジネスモデルで会社が大きくなれるのか - A:
-
オンリーワン的な要素は多少ともあるが、経営者の個性、カリスマ性や立地の特殊性(温泉地など)もある 技術が人によるのか、機械によるのか モノづくりは標準化されていく
また、日本国内に限られるのか、異なる文化に合わせるのか
などビジネスモデルは異なってくる
同友会で学んだ経営指針は、常に変化していく世の中に、柔軟に対応するためのもの。同友会によっては横のつながり、企業、大学/研究機関との連携などを推進している - Q:
- スタートアップ企業との連携、特にDXなど先進分野 あるいは大企業との連携などはあるのか
- A:
-
経営者でグループウエアを作り、連携刺激をうける 経営者も意欲的
私は変われませんという人は若くても変われない 変わることにはモチベーションが必要 会員はフラットな関係で自主運営 連携については会内の信頼関係で個別に進んでいる。 - Q:
- 中小企業基盤整備機構との関係は
- A:
-
整備機構とは仲良くやっている 国の施策の実行組織として動き機能しているのではないか
しかし、現場の声を反映できていない制度もあり、中小企業経営者の声を聴く仕組みがやや不足 - Q:
- 自家用車でいつかクラウンという成長の物語があるが、家業を守ることと成長は
- A:
-
同友会でめざしている経営は組織的経営、従って家業から組織的な運営ができるよう会員は学んでいく
ファミリービジネスであっても良い(例えば酒づくりなど) しかしそれを継いでいくのはだれか 同友会で強調している経営理念は自社の存在意義を追求すること
成長でも停滞でもない 常に変革しつつ身の丈に合った仕事を継続すること - Q:
-
後継者がいるところが10%、57%が止めたいという数字には驚き
中小企業は日本経済の資産と思うが、人材の維持などサポートをするのか - A:
-
M&Aの勉強会もあり、会員同士でのM&Aが行われることもある
中小企業の後継者難は経営者の収入が減っていることで 子どもを後継者にしないのは普通の会社で給与生活者として勤めた方が収入も良いと考えるから。
黒字のうちに畳んでしまいたいと思う経営者が多い。
今は物価高、インボイス、人材不足など経営課題が山積している - Q:
-
自分の部下で家業(運送業)を継ぐために会社を辞めたものがいたが、結局価格転嫁が上手く行かずに苦労 中小企業のなやみは価格転嫁ができないことではないか
業種別での情報交換などあるのか - A:
-
同友会では業種別のグループは作っていない
基本は異業種から学び、連携すること 横展開サポート
運送業は規制緩和による乱立の問題が多く、低価格競争であり、2024年問題もある中、価格転嫁が一番できていないことが調査でも明確だった。 - Q:
- 小さい企業の方が女性の活躍、子供が多いというのをどのように見ればよいのか
- A:
-
大企業は子供を持つ女性に対する制度はあるが、必ずしも実用できていない
大企業を辞めて中小企業に移っていく
中小企業は制度が無くても、フレキシブルな対応をする
同友会では障がい者の雇用も勧めている 「中小企業における労使関係の見解」をもとにした「人を生かす経営」で、ダイバーシティも従来から推進している
採用が難しく人的余裕がないため人材の選別はしていられない。人材育成こそ大事。 - Q:
- コロナ禍支援策で金だけ出す政策が多かったがもっと別にやることがあるのではないか
- A:
-
コロナの時、政策要望を政府に働きかけ、金融機関にも要望
金だけの対策ではない - Q:
- 中小企業が海外進出するときのハードルが高いと思うが、撤退や進出などどうするか
- A:
-
海外取引のある企業は少ない 特に要望はなかった
政策の利用より、自主性を重視 自主性を阻害する金だけ支援の政策はダメで、仕組みつくりの方が大切 - Q:
-
350万ある中小企業で、同友会の会員は5万以下
同友会に入るような経営者は意識が高いのではないか
同友会の会員でのデータは中小企業全体の姿ではないのではないか - A:
-
同友会の景況見通しの数字などは日銀短観の大企業のトレンドとよく似ている。それに比べて中小企業庁の調査結果は水面下。
セーフティーネットが必要なところが実際のボリュームゾーンになっている
政策として補助金政策だけではだめで、起業家精神を育てる施策が必要
中小企業を育てるためには大企業への規制が必要な場合もある。
大企業からみると中小企業への調達コストは年々下げるのは当たり前の世界
賃上げによる単価の切り上げが認められないことが多い。中小企業を育成概念が社会に必要。
EUなどは産業別組合で、企業の大小は関係ない。