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一般社団法人 ディレクトフォース

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 2021/07/01(No.344)

 大学教育に携わって ーー 滋賀大学時代15年の回想 ーー

小栗 誠治

遠がすむ琵琶のみづうみ とりよろふ比良霊仙の歌詞に始まる滋賀大学の学歌を何度歌ったことだろう。私は日本銀行に28年間勤務した後、縁あって、1998年4月、滋賀大学経済学部の教師となりました。関西の勤務は初めてのことでした。

同学部の前身は彦根高等商業学校で、現在もその建学の精神である「士魂商才」の理念、すなわち、彦根藩出身の井伊直弼大老の武家の精神と、広く社会一般の利益を追求した近江商人の精神を受け継いだ教育が行われています。

私は、現在、DFアカデミーで高崎経済大学のリレー講義の1コマを受け持っていますが、以下では、滋賀大学に奉職した15年間を回想し、大学教師の一つの姿を述べてみたいと思います。

びわ湖を望む彦根城(遠くに比良の山々が見える)

教育への情熱

大学教師の仕事のやり方は、人により異なりますが、私は、日本銀行時代と同様、毎日大学へ通い、研究室で仕事をすることを原則としました。そのため大学のある彦根に住み、大学へは自転車で通い、昼食は妻の作った弁当を研究室で食べるという生活を送りました。

同大学では「中央銀行論」「ファイナンス市場論」「専門演習」のほか、「現代の金融」「外国文献研究」を担当しました。講義には毎回十分な準備を行い全力投球で臨んだ積りですが、教壇に立つ際はいつも緊張感がありました。

講義やゼミでは、激動する金融・経済の諸問題を考える際、できる限り本質に立ち返り、かつ総合的に理解することが大切であると繰り返し強調してきました。
 ゼミの卒業生は、学部生119名、大学院生5名、交換留学生2名、合計126名に達しました。卒業生は、金融関係をはじめ幅広い業種に就職しており、国内外で活躍しています。ゼミ生は私が大学教師であることの直接の証であり、何物にも代えがたい宝物です。ゼミのOB・OG会で社会人として活躍するゼミ生に会うのが何よりの楽しみです。

研究の魅力

教育とともに、研究への強い意欲を持ち続けているのが大学教師です。自分の関心あるテーマについて、何らの制約を受けることもなく自由に研究ができることこそ大学教師という職業の最大の魅力です。

私の主たる研究テーマは一貫して、中央銀行の本質を追究し、そこから21世紀の金融システムの中核に相応しい中央銀行の原理論の構築を目指すことです。中央銀行の近年の政策がこれまで経験したことのない未踏の領域に踏み込んでいる今日こそ、こうした研究は重要かつ意義のあることと考えられます。

具体的には、中央銀行研究の核心ともいえる「中央銀行券の本質や政府紙幣との違い」「通貨発行特権とシーニョレッジの問題」「最後の貸し手機能」「中央銀行と政府の関係」などの研究に精力的に取り組んできました。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスでの在外研究において、中央銀行論の泰斗であるグッドハート教授と親交を深めることができたのも幸せでした。研究成果を体系的に取りまとめのうえ、経済学の博士号を取得したことも感慨深いものでした。

大学の管理・運営に携わる

教育、研究面に加えて、私は大学の管理・運営面にも深く携わり、2001年7月から3年間、副学長(2004年4月の大学法人化後は理事)として、教育全般の一段の整備、充実、改革を強力に推進しました。例えば、教養教育の充実、海外の大学との国際交流の推進、放送大学等他大学との連携の強化などに努めました。

さらに、この時期は、国立大学が法人化する移行の時期に当たり、旧組織を廃止し、国立大学法人滋賀大学という新組織を立ち上げるための仕事に大変苦労したことが強く思い出に残ります。

もう一つ忘れられないことは、県を超えた国立4大学、すなわち滋賀大学、滋賀医科大学、京都工芸繊維大学、京都教育大学の合併統合の話が持ち上がり、これの検討に精力的に取り組んだことです。この合併統合は、結局実現に至らず、中断という残念な形で終わりました。大学の法人化への移行や合併統合の検討など、滋賀大学の歴史に残るような事態に深く関与できたことに感謝しています。

この間、滋賀大学地域連携センターの所長を2年間兼任し、地域のまちづくりや地方自治体の支援など大学の持つ知的財産を地域社会に役立てることにも注力しました。滋賀県公金管理委員として同県の公金管理のアドバイザーは現在も務めています。

小栗ゼミOB・OG会

若い人と語り、教える喜び

滋賀大学での15年間を振り返ると、幼い頃から憧れていた大学教師の職に就き、日本銀行での経験、蓄積を活かし教育、研究を行うことができたことに感謝の気持ちで一杯です。2013年3月、滋賀大学を定年により退職し、幸いにも同大学から名誉教授の称号を戴きました。

同大学退職後は、法政大学、拓殖大学、同志社大学、青山学院女子短期大学などで教えてきました。これからもDFの活動を通じて教育に携わり、貢献できればと思っています。エンドマーク

おぐりせいじ(1121)DFアカデミー
滋賀大学名誉教授 元日本銀行

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