サイト内検索 powered by Google

一般社団法人 ディレクトフォース

bt_ホーム
タイトルイメージ

 2019/12/16(No.307)

「自治会活動5年を振り返って思う事」

 

宮崎 泰雄

筆者

はじめに

一般に、町会・自治会活動のイメージはどのように描かれているでしょうか?「基本的には参加したくない。出来れば避けたい」と、そのように考える方が多いと思います。私も、その1人です。現在の住居に住んで40年弱になりますが、自治会活動については現役時代は仕事で忙しく、前回は、妻が嫌々引き受けて、役員をやってくれました。

私の住んでいる自治会役員は、基本的には、1年毎の順番でやることになっています。私の地区は、24世帯が集まった班なので、24年に1回役員を引き受けることになっています。2度目は、5年前(2014年度)に、我が家に役員の順番が回ってきました。役員を引き受けるとしても、負担の少ないものを狙いましたが、くじ引きで本部役員を担当することになりました。今回は、退職した私にやれとの妻の考えです。1年やればよいだけであり、仕方なく引き受けましが、家族全員が楽しくかつ快適に住めた街なので、少しは貢献しなくてはとの気持ちがあったことも事実です。

役員は1年間が義務でしたが、なぜか自治会活動に5年間も関わるようになってしまいました。その辺の事情を今までの活動を振り返りながら述べてみたいと思います。

1.住んでいる地域と自治会の概要(自治会組織図参照)

(クリック→拡大)

まず、私が住んでいるのは、千葉県柏市にあるいわゆるニュータウンで、大手のデベロッパーが1980年のはじめに開発し、約1600世帯の戸建てからなる大規模な住宅地です。当然、住んでいる人の年齢も、入居がほぼ同時期に集中的に行われたので、70歳台前半が大きなかたまり となっており、今後の高齢化の見本となるような地域です。

自治会活動は活発で、1つの自治会で1600世帯をカバーしています。1600世帯が10支部に分かれ、支部の活動を行うとともに、本部に10近くの部があり、全体にかかわる事項やイベントを行っています。役員任期は1年で、再任を妨げませんが、大部分が1年で交代してしまいます。そのため、事業の継続性に大きな課題を抱えています。

(クリック→拡大)
自治会組織図

役員、特に本部の部長になると、毎月の定例会議やイベントごとの会合で、週末の多くが自治会活動に忙殺されるのが実態です。極めて多忙な1年なので、積極的に複数年度継続して役員をやるのは極めて例外です。かつ、住民の高齢化の中で、役員業務負担に体力的にも耐えられない人が出てきています。役員を引き受けられない、辞退したい。そのような負担は受けられないので、自治会を脱退したいとの話もあり、対応に苦慮したこともあります。

一方、高齢化のなかで、地域全体の年月を経る事による公共施設などの劣化、空き家の増加など、入居初期と異なる課題が出てきて、自治会活動自体の範囲の拡大や深度が増しているのも実情です。

自治会以外に、建築協定委員会、緑地協定委員会など、地域の環境を維持する組織もあり、自治会と同様に役員は住民から選ばれます。これらを含めると、役員は毎年80人近くとなり、1600世帯とすると、20年に1回は回ってくる計算になります。役員2回目ですと、入居時の年齢が30歳台とすれば、2回目までは年齢的にも大丈夫ですが、3回目は100歳近くになり役員としての活動はムリとなります。そもそも、現在の住居を離れて介護施設等に移る方が多くなると思います。そうなっても、地域が生き生きと存続していくには、新しい住民が確実に入ってくる仕組みや魅力が必要です。これが、現在の自治会に課せられた重要な課題です。

2.2014年度は、事業部長を拝命

ここで、私の自治会活動を振り返ってみたいと思います。2014年度ですが、自治会総会後の最初の役員会で事業部長を仰せつかりました。役員の担当任務は、本人のPC技能や職務希望などを事前に役員候補者にアンケートで聞いて、自治会長が専決します。本来は、1人1人から話しを聴いて決めるのが理想ですが、1人1人の承諾を取っていたら、組織が成立たないとの考えによるものです。

事業部の活動内容は、自治会員の交流・一体感を保つため、住民参加のイベントを年間5回実施することです。その実行委員長が事業部長の役割です。私は春・夏のイベント2件の主担当となりました。今まで自治会のイベントにほとんど参加したことがない私が委員長をするのですから大変です。しかも、委員会のメンバーは、全員、経験のない新人です。

夏祭り

夏祭りは自治会主催の2大イベントの1つです。8月のお盆直後に2日間行われます。約2000人以上の住民や近隣町会の方が来ます。夜店や出店、花火の打ち上げ、櫓の周りや櫓の上での盆踊り、住民有志の雄大な和太鼓演奏など、多彩な行事が行われます。「夏祭り」の締めは、会場に隣接する運動公園での打ち上げ花火。花火業者が来て30分程度、本格的な花火を絶え間なく打ち上げます。参加した皆さんが間近で打ち上げ花火を見て、満足して家路について行くのを見ると疲れも吹っ飛びます。

準備と当日の行動には、今までに引き継がれた書類・マニュアルがあります。準備や当日で80人近くの人が、会場設営と後片付け、交通整理、ゴミステーション、接待、進行などにかかわります。なかでも、80人近くの各人別・時間別の詳細な役割分担表の作成(Excel)は、事業部長の大きな仕事です。勿論、前年度役員がアドバイサー、過去役員がサポーターとして支援をすることで、現場が回る仕組みを作っていますが、高齢化と若手の減少で、これも限界に近づいています。

餅つき大会

もう1つの大イベントが、正月の餅つき大会です。今は、実際の餅つきはしませんが、150Kgのもち米を蒸してお餅をつくり、かつ「トン汁」もつくり、1000人以上の住民が新春の公園に集まり、食べて頂きます。餅切り、黄粉・あんこつけなどを盛り付けする女性の方や、「トン汁」をつくる子供会のお母さんの負担は大変なものです。

ここでも、高齢化で継続の危惧がでています。餅を作る過程の簡便化などの課題があります。食べに来る人が多くなる一方、作る方に回っていただける方は少なく、少数の人に多年にわたって負担を強いているのが現実です

私が、事業部長を希望したのは、イベントは目的と期限が明確で終わってしまえば後に引きずらないとの考えで引き受けました。確かに、イベントが終われば、反省会と次年度への引継ぎを作れば終了です。しかし、イベント準備への負荷は予想外に大きくかつ重たいものでした。もう二度とやりたくないというのが、イベント終了後の実感でした。秋・冬は、運動会、餅つき大会、凧揚げ大会を副の立場で行う事で、あっという間に1年が経ち、満期でお役御免ということになる予定でした。

3.非役員の立場でその後の2年を支援(2015-2016年度)

2014年度の役員は、会長候補を除いて全員退任しましたが、2014年度の役員から2015年度の自治会会長がでたことから、顧問や総会の議長を頼まれ、その後の2年間は、自治会活動に非役員の立場でかかわる事になりました。

即ち、

  • 2015年度 事業部アドバイサー、
  • 2016年度 事業部サポーターと自治会総会の議長

などを行いました。

なぜ、1年で役員終了したのに、継続して自治会活動を支援することになったのかを振り返ると、自分の時にも過去の役員に支えられたことから、自分も新しい事業部長の側面支援をすべきという義務感と、事業部長時に会社時代とは異なる新しい地域住民とのつながりができたことも一因だと思います。この2年間は、非役員としてストレスが少ない中で活動ができ、楽しみ+若干の負担で済んだ良い時期でした。

4.2017年度-2018年度は、再度役員として

2017年度は、一緒にやってきた会長の強い要請と、事業部以外の分野でお役に立てればとの考えで、担当部門を持たない副会長として引き受け、自治会活動の理解をしながら「お助けマン」としてやっていこうと決めました。

2017年度-2018年度の2年間は、自治会活動の多くの分野に絡みましたが、その中で印象深いものをいくつか取上げてみます

空き家の件

自治会は、空き家の増加懸念と空き家から発生する近隣からの苦情が出る中、まずは、「空き家」の実際を把握することを2014年度から始めました。それ以降ほぼ毎年、「空き家」調査を行ってきています。

まず、マクロ経済の視点から見ると、高齢化と少子化による日本の人口減少が始まり、今後、そのスピードが増加することは確かです。現在、年間26万人が減少(2019年8月1日現在の前年同月比 総務省統計局)しており、松本市(24万人)が毎年ほぼ1市ずつ消滅する状況で、日本全体の大きな問題となっています。

平成25年(2013年)住宅・土地統計調査によると、空き家率の全国平均は13.5%となっています。私が住んでいる地区は自治会調査によると、3.4%と全国平均13.5%を大きく下回るので良さそうですが、全国平均には、アパートなどの貸家を含んだもので、一般の1戸建て住宅の視点からみると、3.4%は決して安心する数字とは言えません。自治会では、毎年、空き家調査を、現地・現況を確認して、正確な空き家数と状況を掴んでいます。空き家の状況が大変悪いものについては、所有者確認や行政の支援などへの改善を依頼し、庭や公道に面した花木の伐採や整理をお願いしています。そのような事例はいくつかありますが、空き家が今後増加すると、1自治会で対応する限度を超えてしまうような気がします。

1600世帯の大団地ですので、空き家を増やさないためには、新しい入居者の増加が必須です。高齢化する団地に、若い方が入って頂くことは、団地の持続的な活性化には絶対必要です。やはり、若きも老いも、男も女もいる多様でバランスがとれた街が、持続的で活力ある街になると思います。私の家の近隣には、子供連れの若い家庭が3戸ほど入居し、子供の明るい声と笑顔で、通りは活気と明るさが出てきました。赤ちゃんとの挨拶を欠かさずしているおばあちゃんもいます。このような街になる事を期待したいです。

NPO法人による住民による住民への支援

当地区には、自治会のほかに多くのボランティア団体があり、街の活性化と住民の交流拡大を支援しています。その中の1つに2013年4月から本格活動を始めたにNPO法人があります。大学との共創シンポジウムの中で、自治会と住民有志により設立されたものです。

主な活動の1つとして、ゴミ出し、ごみ当番、犬の散歩などの生活支援を、有償で行っています。支援するするのも住民、支援をうけるのも住民です。健康で少し時間が有る方には、健康維持・地域への貢献・少額の報酬になります。利用者は年々増加しています。今後、高齢化が進めば、サービスの質量での増加が必要となりますが、担い手の確保がここでも問題です。

このNPO法人は、生活支援の他に、環境維持としての剪定業務を行っています。年間100件以上の剪定を行っているとのことです。1600世帯に対しては、1割弱ですが、担い手の数から考えれば、フル活動だと思います。剪定作業は高所での作業があるので、危険がともないますので、安全確保が大変重要です。また、剪定技術の向上は、顧客サービスの点からも重要で、常に研修を行っているようで、住民からも好評のようです。

最近は、生活支援や剪定に加えて、健康年齢の維持のための教室の実施や交流会を積極的に行っています。また、柏市の住民互助組織としては先駆的なものであり、住民と街並みの維持には欠かせない存在となっています

地価下落の中での対応活動

私が住んでいるニュータウンは1980年のはじめの日本の高度成長期に開発・分譲されたものです。当然、都心から離れた所で、駅へのアクセスに問題があります。丁度、団塊の世代が家庭をもって子供ができ、郊外の1戸建てを目指した時代の産物でもあります。

現在は、都心回帰と少子化・共稼ぎの時代なので、都心の交通便の良いマンションに人気が集中しています。郊外でも、駅に近いマンションが好評です。その中で、郊外の1戸建て住宅は人気の圏外にあり、地価の下落に見舞われています。私の地区もご多分に漏れず、買った値段の1/3に低下し資産価値の減少となり、今後の老後生活への不安を持つ方も出てきています。

私が住んでいる地区は、2016年の地価では、全国の住宅地の中で、最大の下落に見舞われ、大きく新聞報道されたようです。そのような中で、何とか、汚名挽回すべく、地域の活性化プロジェクトを自治会は立ち上げたりしてきました。その中で、たまたま、国土交通省が後援する、「第14回住まいのまちなみコンクール」に応募する機会が与えられました。

結果として、全国からの自治会、町会、まちなみ維持の多くの団体の中で、国土交通大臣賞(実際は第1位)を獲得出来ました(国土交通大臣賞賞状参照)。地下下落全国第1位という暗いニュースのなかで、パッと光るニュースに住民・役員は大いに喜びました。このコンクールは、「まちなみ」のハード面でなく、ソフト面を評価するものです。具体的には、「まちなみ」の維持・向上にいかに地域住民が貢献したかを見るものです。古いまちなみの維持であったり、ニュータウンの高齢化への対応や、震災復興への努力など多岐な受賞が過去ありました。当自治会は、「開発者が計画した美しいまちなみを住民が育むとともに、年月を経たニュータウンの様々な課題に前向きに取り組んでいる」が評価ポイントでした。

(クリック→拡大)
国土交通大臣賞賞状

勿論、コンクール受賞だけでは、住んでいる地区の価値(価格を含めて)が上がるわけではありません。今後は、このコンクール受賞をばねに、地域の課題に取組んんでいくことが大事です

官学との連携

毎年ほとんどの役員が変わる中で、持続的に大きな課題にキチンと取り組んでいくことは、大変なことです。そのため。前年度役員は、アドバイザーとして、翌1年間、新役員がスムーズの業務を果たせるように側面支援を行う仕組むにしています。また、引継ぎマニュアルの整備などもしてきておりおます。

しかし、それだけでなく、行政や知見を有する大学などの外部との連携も必要です。現在は、ある国立大学の先生のご支援・ご協力をいただいて、空き家、まちなみ、活性化などについて、シンポジウムやワークショップを行っております。共に、win-win の形になるように、自治会は、協議会や活性化委員会などを作って対策を検討しています。

おわりに

自治会に関わった5年間は良い経験になりました。また、地域が抱える課題の多さと大きさを知ったことも貴重な勉強になりました。今後、個人として限られた時間と体力・知見を活かして、地域の貢献をできればと思います。皆さんも、働き方改革などで、余った時間の1部を地域活動にかかわることは、良い経験にもなると思います。

なお、ここで述べたことは、一個人の限られた経験によるもので、誤解などがあるかもしれません。その際はご放免ください。エンドマーク

みやざきやすお ディレクトフォース会員(会員番号796)
元太陽銀行(現三井住友銀行)元本多通信工業

一般社団法人 ディレクトフォース 〒100-0004 東京都千代田区大手町2-6-2 日本ビル 6F

e-mail : info@directforce.org | Phone : 03-6693-8020 | (C) 2011 DIRECTFORCE

アクセスマップ