サイト内検索 powered by Google

一般社団法人 ディレクトフォース

bt_ホーム
タイトルイメージ

 2019/06/01(No294)

四国霊場八十八箇所歩き遍路

岩橋良雄

筆者

生来、運動神経がにぶく、白い筋肉が少なく、幼い時から近視で動体視力が悪く、瞬発力や敏捷性を必要とするスポーツやボールを扱うスポーツはまったく不得手である。

小学校時代、勉強の成績が良くても賞品無しなのに、運動会では賞品を貰えるのは不公平だと思っていた。今でもスポーツ選手ばかりをマスコミで褒めそやしはしゃぎたてるのには違和感を覚える。滅び行くローマ帝国時代の「パンとサーカス*」と同じじゃないか。

ということで、もっぱら、歩く、泳ぐ、ゆっくり走る、といった基本動作で健康管理してきた。

中仙道を日本橋から京都三条まで歩いたり、還暦で東京マラソンを走ったりした。完全リタイア後サンデー毎日になったので四国霊場八十八箇所歩き遍路をする気になった。

1100km、約50日の行程を「通し打ち」する積りだったが、不可避の所用で中断せざるを得ず、2度にわけて2017、2018年のいずれも5月に廻った。5月は、暑くも寒くもない新緑のいい季節で、荷物も少なめで済み、日没が遅く万一道に迷って遅くなっても日暮れ前には宿に着ける。

この計画を妻に話した時ちょっと驚いていた。何か大きな心境の変化があったのかといぶかったようだ。確かに、道連れになったお遍路さんの中には、逆縁で家族を亡くした方、不治の病の方、心の病で無職30才という息子の行く末を案じている方など、人生の思い荷物を背負った方が少なく無かった。自分は、健康管理目的で歩くのに、全都道府県の中で唯一足を踏み入れたことが無かった高知県のある四国を選んだに過ぎない。こんな動機では、前述の人たちに少し後ろめたいが、自らの境遇に感謝しつつ歩みを進めるにつれて、現役時代の、自殺した部下、心の病になった部下、小生の人事配置で不幸になったかもしれない部下に対する贖罪の気持ちにもなった。お遍路効果かもしれない。

(クリック→拡大)

お遍路さんは年間約30万人だそうで、そのうち歩き遍路は約5000人といわれている。

98%以上がバスツアーやマイカーによる車遍路であり、10日から2週間位で廻るそうだ。

道々、5回目、8回目といった歩き遍路の猛者にも出会った。外国人の多さにも驚いた。米国、豪州、欧州、なかでもフランス人が多い。サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼経験者が、「コンポステーラ巡礼*はゴールが最後のひとつだけだが四国巡礼は八十八もゴールがあるのが楽しい」、と言っていた。

(クリック→拡大)

たくさんの「お接待」もしてもらった。歩き遍路なればこそだ。

マラソン同様、歩き遍路にはミニプロジェクトマネジメントが必要だ。10kg強の荷物を背負い毎日25km前後を歩く。2-3日は誰でも問題なく歩けるが、5日を過ぎる頃から肉刺(まめ)が出来たり膝や足腰に痛みが出たりする。一日中雨でも構わず歩く剛の者も居られるが、多くは天気と脚力と相談しながら歩行行程や宿をダイナミックに決め歩き続ける工夫が要る。

元企業に居た身として、ついビジネスモデルを考えてしまう。移動手段はともかく30万人が全霊場を廻るとして、本堂・太子堂のお賽銭各100円で200円、平均納経料500円とすると、各霊場は年間700円×30万人=約2億円の収入がある。うまいビジネスモデルだ。八十八箇所に含まれる寺とそうでない寺では大違いだろう。一方、宿泊施設はどうか?団体相手の大手は別として、歩き遍路者対象の一泊二食付8000円位の宿は約1000軒あり、5000人×50日×8000円/1000軒=200万円。人気の有無や、お遍路さん専業か否かでばらつき、一概に言うのは乱暴だが、お遍路さん相手だけでは経営は苦しそう。廃業するところが増えるのも止むなしか?

(クリック→拡大)
四国八十八ヵ所はすべて巡礼が終わり結願すると金剛峯寺へお礼参りに行き
奥之院にある弘法大師さまに巡礼の無事を報告し納経帳の最初の頁に朱印をいただく

最後に般若心経について一言。少なくとも本堂と太子堂の2回、八十八箇所で唱える。意味も理解せず唱えるのは阿弥陀様や弘法大師に申し訳なく恥かしいので初めて意味を学んだ。浅い理解かもしれないが、言っていることは「 五蘊皆空(ごうんかいくう )*」とその解説、そして三途の川を越え天国?へ行くための呪文だけ。地獄に落ちたくはないが、呪文を唱えれば花園で美女に取り囲まれる天国に行けるのだよと言われても‥‥ 美女がいるってことは人間が居る?両親やご先祖様、会社の元上司や不幸にした部下達も居るってこと?会いたい気持ちも無くはないが、いろいろ怒られそうだし、顔向けできない人も居り、微妙。

人間の脳のからくりや心理の理解が進んだ現代人には、「五蘊皆空」というのがしっくり腹に落ちるのではないかと思う。呪文は三途の川を越える時の恐怖・苦しみ・痛みから気持ちをまぎらすのに有効かも?

三途の川には少し時間がありそうなので夜中に目覚めた時に試している。4時なら起きてしまう。2時,3時だともう少し眠りたいが、一眠りした後なのでなかなか眠れない。羊を数えるのは単調で直ぐ飽きるので般若心経を頭の中で諳んじることにした。すぐ眠れる。

駄文を最後まで読んでいただきありがとうございました。エンドマーク

いわはしよしお ディレクトフォース会員(915) 
 元 新日鐵(現日本製鉄) 

【註】

*パンとサーカス:詩人ユウェナリスが古代ローマ社会の世相を揶揄して詩篇中で使用した表現。愚民政策の例えとしてしばしば用いられる名言であり警句である。

*コンポステーラ巡礼:キリスト教の聖地であるスペイン、ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路。

*五蘊皆空:五蘊とは仏教用語で、色(肉体)、受(感覚)、想(想念)、行(意志)、識(認識)のことで、 人は、死んでこれら肉体や心の働きがなくなれば(空になれば)、苦しみや悩みや葛藤はなくなる(空になる)の意。

一般社団法人 ディレクトフォース 〒100-8228 東京都千代田区大手町2-6-2 日本ビル 7F

e-mail : info@directforce.org | Phone : 03-6865-7860 | (C) 2011 DIRECTFORCE

アクセスマップ