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 2019/05/01(No292)

新元号「令和」のあれこれ

ーー にわか国文学研究者(?)の考察 ーー

越川 頼知

4月1日、新元号が発表になったと同時に、たちまち日本全国の国文学のプロ、セミプロ、アマなどがあちこちから声を上げ出しました。出典の万葉集がこんなに話題になることは今までなかったでしょう。斯くいう私もその一人。翌日2日に図書館や書店へ行っても、該当の部分が書かれた書籍は見当たらず、世間の反応の速さに敗けました。

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「令和」発表直後の街の様子(2019.4.2 筆者撮影)

菅官房長官と安倍首相が万葉集からの文章を読み上げましたが、まさに提案者といわれている中西進先生(大阪女子大名誉教授)の著書にある読み下し文そのものです。248番目の元号として初めて国書から採用されたことは、5月1日からの新時代へ臨む心構えの指針かも知れません。安倍首相の「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ、という意味が込められております。」という言葉から、本来日本人が持つ美徳や力を発揮して、混沌かつ急速に変わる時代を乗り切ってゆくことと私は捉えました。

「令和」の典拠 (クリック拡大)

*4月19日、朝日新聞の取材に複数の政府関係者が中西進先生が考案者であることを認めた。

2016年(平成28年)8月8日、今上天皇が「生前退位」を示唆した時から様々な議論が続きました。やっと2017年(平成29年)6月に今上天皇一代限りの退位の特別法が成立・公布されたことで、この(エッセーが公開された2019年)5月1日に第126代天皇が即位し、新元号の時代が始まりました。前天皇は上皇となられましたが、 ( ) (おくりな)の平成天皇は崩御されてからのものです。

ここから、皆さんのご参考あるいは更なる調査などの切っ掛けになればと思い、新元号「令和」について ( したため ) めてみました。

万葉集は8世紀の中頃、奈良時代に 大友家持 ( おおとものやかもち ) (718-785年)などが編纂したものです。出典の序にある花見の宴は、大宰府の 大友旅人 ( おおとものたびと ) (665-731年、家持の父)の邸宅で、天平2年(730年)正月13日(太陽暦2月8日)に催された梅見の宴です。梅は中国からの外来植物で、海外との窓口である大宰府で梅の花を愛でながら和歌をつくることは、最先端のエンターテインメントだったのでしょう。

1.「令和」の読み方

「れいわ」はおかしい、「れい」は漢音で「わ」は呉音だから、呉音+呉音の「りょうわ」が正しいと言う人がいます。漢音+漢音だと「れいか」になります。和を「か」と読む例は極めて限られており馴染めませんね。21世紀の我々にしっくりくる呼び名でなければ意味がないでしょう。漢音+呉音でもなんの問題もありません。

上記出典の序の別の読み方もあります。例えば、 気淑 ( きよ ) 風和 ( かぜやわ ) らぐ。梅は 鏡前 ( けいぜん ) ( ふん ) ( ひら ) く。蘭は 珮後 ( はいご ) の香を ( くゆ ) らす。訓読(読み下し)は平安初期(9世紀頃)までは自由だったそうです。同じ宴の中でも人により読み方が違っていたかも知れません。

2.国書と言っても元は中国の古典ではないのか

序の原典として中国の古典、例えば「 文選 ( もんぜん ) 」にある 張衡 ( ちょうこう ) の「 帰田賦 ( きでんのふ ) 」などが挙げられます。もちろん大友旅人は知っていたでしょうし、自家薬籠中のものとして活用、日本化させていたのでしょう。

欧米では、ギリシャ・ローマに由来するものを使ったから、と言って特段話題にしません。我々の日常を見てみましょう。外国由来の単語をごまんと使っています。それは我々の言葉になり文化になっています。無理に中国の古典に遡ることなく、国書から取ったと言ってもなんらおかしいことはないでしょう。

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「令和」直前の街の様子(2019.4.25 筆者撮影)

ところで当時のエリートは大学寮などで中国語を漢音で習っていたのです。上記の序もすべて漢音で読んでいたかも知れません。今大学で英語だけで授業するのは、大変なことをしている様に言いますが、当時は外国語で授業が当然だったのです。更に下って明治初期にはお雇い外国人は、英語やフランス語、ドイツ語で授業をしていました。ひるがえって今の我々はグローバル化と言いながらそこ迄できません。昔の人の方が余程グローバルでしたね。

万葉集の良さは、日本最古の歌集であり、天皇や皇族、貴族、官僚だけでなく、 防人 ( さきもり ) や農民まで、幅広い階層の人々が詠んだ歌が収められていることです。そしてその後の時代にも大きな影響を与え、まさに国書と呼べることです。

外務省は4月1日の発表後〈REIWA〉を新元号として、世界195ヶ国と国際機関に通知しました。ところが外国語メディアには令は命令の令などと強調したり、日本の右傾化などと拡大解釈する外国人大学教員まででたため、誤解を生じかねません。正確なニュアンスを伝えるのは大変難しいことが判明しました。

外務省は改めて、令和は「美しい調和beautiful harmony)」だと説明する様に、在外公館に指示しました。この例でもわかる様に、ものごとを正確に伝え理解し合うことは簡単ではないですね。この様なことは世界中至る所で起こっています。グローバル化の中で最も基本的な問題として、日本全体で意識し、改善努力の必要があります。

僅か二文字の新元号を、来るべき新時代への指針とし、日本にしかない人類の無形文化遺産と思い、皆で大事にして行きましょう。エンドマーク

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