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 2018/5/01(No268)

「帆船に魅せられて」

曽山 高光

私

帆船とは人間がつくり出した最も美しい建造物である」というビクトル・ユーゴが記した言葉が帆船の本にはよく出てくる。今回はこの帆船に魅せられた私の物語を紹介します。

私の叔父が外国航路の船長で少年時代に日本の港に帰った時はよく船を訪れたり、神戸から横浜まで乗せてもらったりした。それが潜在的に船への憧れであったかもしれない。

帆船の話は2009年に「海外旅行研究会」で「男のロマン」の一つとして帆船レースの話や写真を披露しました。今回は「帆船模型」にかかわる話しを書きます。

最初の「帆船」との出会いは1979年に欧州出張の時イギリスで出会った帆船「Cutty Sark」だった。初めて見る船、それも日本では見たことのない帆船の美しさに興奮を覚えたのを今でも記憶している。この出会いの後、日本に帰国し早速日本製の木製組み立てセットを購入した。キットは実寸の1/80で全長87㎝、高さが59㎝のものだった。

初めての組み立てだったので時間がかかったが、部品製作途中の1982年に「ドイツへ赴任」の命が出た。個々の部分の組み立てがほとんど終わっていたので引っ越し荷物と共にドイツへ持っていった。ドイツで勿論組み立てを継続したが1988年に「イギリス」へ転勤となり船にとっては未完成のまま2回目の引っ越しとなった。

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写真① 37年間楽しませてもらった「カティサーク」

イギリスは前述したように「カティサーク」との出会いの場所である。キットには勿論図面はあるが本物を観察し、なるべく本物に近付けるため船が保存してあるグリニッジに通った。そしてついに1989年に完成した(写真①)。勿論完成祝いに進水式と同じくシャンパンで祝った。この船はその後オランダを経て1989年に私と共に日本に帰国した。然し日本で数回転居したため、2017年転居時に残念ながらロープが切れ破壊沈没した。37年間楽しませてもらった。「有難う」。

日本では「海事博物館」という博物館は少ないがヨーロッパ、特にイギリスにはかなり多い。この中でイギリスの南のポーツマスにある海事博物館で2番目の帆船と出会う。それは「HMS Victory」という船で1765年に建造されトラファルガー海戦でネルソン艦隊で活躍した有名な戦艦である。ドックに永久保存されているが、現役艦扱いを受け、れっきとした艦長が乘っている。

戦艦なのでスマートな「カティサーク」とは異なり全長100m、3,500トンで104門の大砲を持ち重厚な強さ(但し英語では船は“She”と呼ぶ)を感じた。そしてグリニッジの帆船模型店でこのキットを見つけ手に入れた(実は家内からのバースディプレゼント)。キットはイタリア製で1/98サイズだが全長110㎝と大きいので、組み立てて日本へ持ち帰るのは無理と考えイギリスで組み立てるのは諦めた。然しその後オランダへの転勤となりかなりの間手つかずだった。オランダでは5年毎に開催される世界の100あまりの帆船が参加する「帆船レース」で楽しんだ。

ヨーロッパで帆船を充分楽しんで1989年に日本に帰国した。早速「ビクトリー」の組み立てを始めたがったが、まだ在職していたのですぐには始められなかった。そして2003年に退職したので始めることにしたがかなり高度の技術が必要と判断し、銀座伊東屋の「帆船模型教室」に6ヶ月通い、アメリカ海軍の小さな帆船を組み立てノウハウを学んだ。そして毎年伊東屋(現在は交通会館)で開催される「帆船模型展」にも通い「ビクトリー」の数々の模型を観察した。

余談だがこの頃日本で販売されている輸入品の「帆船キット」を見て驚いた。私が持っているキットはなんと現地購入価格の倍以上であった。有名な帆船キットはヨーロッパ製(北欧、イタリア)が多く、材質(例えばヒノキ板)・部品加工度のレベルが高いので高価だがマニアにはこれが好まれている。

(クリック⇒拡大)
写真② 「ビクトリー」の船体構造
18枚のキールが見える
写真③ 「ビクトリー」の船体
5mm巾の外板の2層目の上半分
(濃い茶色の部分)迄貼り終わって4年経った

いよいよ「ビクトリー」の組み立てを始めた。然しこのキットはイタリア製で解説が「イタリア語」と「英語」であった。故に最初の仕事は「英文和訳」だった。全部訳していたのではいつになるかわからないので、工程ごとに同時進行で進めることにした。確かに「カティサーク」より構造が複雑で部品点数も多く手間がかかった。例えば本体を支える「キール」と呼ばれる板はカティサークは11枚だがビクトリーは18枚と多い(写真②)。そして船体の外の板は約5mm巾で片側だけでも35枚で外貼りといって同じ数の板を2層に貼らねばならない(写真③)。

実はこの2層目の上半分までしか進んでいない。というのも数年前に「腰痛ヘルニア」になり、とても長時間座ってやる作業が出来なくなり手術などして4年間位ストップしてしまった。今は出窓にこのまま飾っているがいつ完成するのだろうか?エンドマーク

そやま たかみつ  ディレクトフォース会員(426)
元 キヤノン 

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