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 2018/1/16(No261)

「限りない森林の可能性」

ーー 真の循環型社会とはーー

富永 達之助

私

長らく森林産業に従事しているので、今日は森林、木、についての話を書こうと思う。

数ある産業の中でも我々森林産業は環境の維持改善にとても貢献していると思っているのであるのだが、よく言われることは、紙は結局木を切って作っているんですよね、ということである。
木を切る=自然破壊というイメージを持っている人がいかに多いか。確かに自然の熱帯雨林を違法に伐採することは環境破壊以外の何物でもない。しかし、きちんと管理された森林から木を切り出し、若木を育てていくことはむしろ環境の保護、維持に繋がるのである。

また、その昔、排水や排気の浄化の技術が進んでいなかった頃は、駿河湾、特に富士地区でヘドロの問題がクローズアップされ、また製紙工場の近辺ではパルプを作る際に発生するに硫化水素の何とも言えないいやな臭いが漂っていたことは確かである。しかし、今、どこのパルプ工場や製紙工場に行っても昔のような臭いにおいはしない。日本の製紙工場など街のすぐ近くにありながら住民から大きな苦情を得ることなく操業を続けている。

今回私がみなさんに伝えたいのは、二酸化炭素の再利用、また二酸化炭素の減少に、製紙産業は少なからずの貢献をしているということである。

ご存じの方も多いかもしれないが、木はその約半分(50%)が水分。残りの半分(25%)がセルロースと呼ばれる木質繊維。もう半分の25%がリグニンなど木の固さを保つための有機化学物質で構成されている。

セルロースはパルプの製造過程で不純物を取り除かれパルプとして主には印刷筆記用の紙、ティッシュやトイレットペーパーなどの家庭紙、またおむつや衛生用品の吸収体などに使われる。また、パルプのままで加工され、おしぼりやマスクやコスメティックのフェイスマスクなどにも使われる。

木を固める構成物質であるリグニン等は「松やに」とか「トール油」と言えばわかりやすいと思うが「森の原油」とも呼ばれており、パルプの生成過程で回収され、回収ボイラーで燃料として使われ電力となる。また、建材の貼り合わせ用の接着剤やバニラエッセンスなど食品添加剤としても使われている。現在木質由来のナフサとしてプラスチックの原料としての活用技術が急速に進んでいる。またフィンランドでは木の皮や枝の油分を絞り出したディーゼルオイルが開発され、フィンランドの軽油の約25%を占めるまでになっている。

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木から生成されるエネルギーは再生可能なエネルギーである。よくお客様から再生紙のご要望を承るが、再生紙は何のエネルギーも持っていない。再生可能な資源として再利用すべきではあるが、古紙の再生にはエネルギーが必要であり、ガソリンを使ってトラックで集めてきて、再生のためにさらなる化石燃料ベースのエネルギーを使う。これって本当に環境にいいことなのだろうか、と思う。

木は成長して成木になると、極端に二酸化炭素の吸収力が低下する。歳老いた木は逆に二酸化炭素を吐き出すとも言われている。成長した木は腐って朽ち果てる前に人間の手で切ってあげて、住宅用の建材にしたり、紙にしたりして使ってあげるのだ。そして切り株のそばに芽を出した若木は、二酸化炭素を吸収して酸素を吐き出し、また大きく成長していくのだ。長い時間をかけて、森林は地球上の空気を浄化し、土壌を豊かにし、森に生きる動物たち、引いては我々人類の命をはぐくんでいくのである。

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ログの積み出し(八ヶ岳) ログホームから初夏の八ヶ岳を楽しむ 薪ストーブでくつろぐ

私ごとだが一昨年、フィンランドのログハウスメーカー「HONKA」さんの協力を得て八ヶ岳にログホームを建てることが出来た。2か月以上かけてフィンランドから運ばれてきたログのキットのコンテナを開けた時、一挙に木の香りが私の周りを包み込んだ。人はそれを「フィンランドからの風」と言う。東京からいつ戻っても、八ヶ岳の家の中は木の香りでいっぱいである。ログは湿気のある時はそれを吸収し、乾燥した時は貯め込んだ湿気を吐き出している。木は切った後も呼吸を続けているのである。HONKA の材は樹齢50年から70年の Polar Pine だと聞いた。

八ヶ岳の家でくつろいでウィスキーのグラスを傾ける時、もしかしたら自分が吸っている空気には70年前の空気が含まれているのかもしれない、と思うと、あたかも森の中でウィスキーを味わっているような気になって来る。私にとっては何物にも代えがたい至福の時である。エンドマーク

とみなが たつのすけ ディレクトフォース会員(1166)
元丸紅 現UPMキュンメネ・ジャパン 

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