(2020年7月15日 掲載 8月14日 更新)
「セミナーで学び、小研究会でその学びを深める」というのが、企業ガバナンス部会の学びのサイクルです。近年、社外役員に求められる役割はより一層広く高度化するとともにその責任も増す中で、企業が直面する問題点や課題を研究することは、従来以上に重要となってきています。
本年も以上の趣旨に則り、以下の3つのテーマ候補を設定して希望者を募り、そのうち参加希望者の多かった〈1と3〉の2つに絞りグループを編成しました。
以上のステップによりグループ編成を行った後、キックオフミーティングを12月18日に行い、研究活動を開始。本年(2020)5月末まで研究活動を行いました。研究活動の成果発表は、6月16日に行う予定でしたが、本年初頭に始まった新型コロナウイルス感染症の発生によりスケジュールが大幅に狂い、中止のやむなきに至りました。
その後Aグループでは、「研究報告書」のまとめが6月16日付で出来上がったことから、7月15日にWebに掲載。またその後、Web発表会の検討がお行われ、Bグループに続いて9月19日に開催する準備を進められることになりました。
また、BグループではAグループに先行して本年8月20日にWeb発表会を行うことになり(詳細はこちら)、7月22日に校了した「研究報告書」が8月11日付で公開されました。
本来であれば、両グループとも一堂に会し発表を行う筈のところ、本年は以上の理由により別々にWeb開催を行うこととなりましたが、是非両グループの研究成果をご視聴頂きたくご案内いたします。
Aグループの研究報告書は以下をクリックしてご覧ください。
Bグループの研究報告書は以下をクリックしてご覧ください。
◇ ◇ ◇
【テーマ】「渋沢栄一の経営理念」
【メンバー】
【まえがき】
「渋沢栄一の経営理念」というタイトルに対して5人が研究会への参加メンバーとして集まりました(他にオブザーバー参加1名)。およそ6か月間にかけて自己研鑽の発表と意見交換を10回ほどかけて行いました。参加メンバー各人の関心と興味と今までの各人の人生への想いを、上記タイトルに関連付けながら行いました。平均年齢は72~3歳のかつての企業戦士である。かつての企業での各人の取り組み方も一様ではない。特にこのタイトルの元、参集した人々には特にそれぞれの企業戦士としての生き様があったと言えるでしょう。
研究会の方法論としてリーダーが各メンバーに要請したのは、極力、「渋沢栄一関連の書物を読んでそれを披露し、渋沢栄一を賞賛しあう」という、容易に陥りやすい「議論の場」を避ける事でありました。取った方法としては研究会がスタートする前に4冊の共通テキストを提示し、できるだけそれを読み終えてから、或いは読みながら会議・研究会に参加する旨を徹底したことでした。その4冊とは、①「現代語訳論語と算盤」(守屋淳、ちくま新書)②「雄気堂々」(城山三郎、日本歴史文学館32講談社)③「小説渋沢栄一上下」(津本陽、幻冬舎文庫、平成31年4月25日発行)④「澁澤榮一傳」(幸田露伴、露伴全集第十七巻、昭和24年8月25日発行)でありました。これは功を奏したと言えます。書物を通しての知識の披露合戦が避けられたこと、及び各メンバーが自分の頭で考えることと、今までの各自の人生経験等を踏まえた議論が可能になったということでした。
研究会に於いては上記の4冊に限らず、各メンバーの発表の度ごとに多くの書物等々が参考文献として報告されました。この報告書にアクセスされてきた読者の方々で、「渋沢栄一を知って、賞賛することで満足したい」というのであれば、ある意味で読み難いであろうし苦痛かもしれません。また研究会である以上「何らかの新規性」をアウトプットしたいと言う思いもメンバーの中にありました。従って渋沢栄一の伝記的なスタンスを乗り越えていく姿勢が5人のメンバーのある意味の挑戦でもありました。以上がおおよその今回の研究会の方法論でありました。しかしながらかつての英雄である渋沢栄一を心底から「賞賛すること」はメンバー共通の意識であり、渋沢栄一を介してその先の「混迷する現代社会と現代人」の「課題とその取り組み方」を、提示したいという想いが共通の無意識の層にあったとリーダーとしては解釈しています。提示するものは各人の個性あふれるものになりました。従ってアピールの対象者は現役の経営層のみではありません。ビジネス界の職責としての経営者を含む多くの老若男女の日本人であるということになります。
それを「経営理念」という一般的に使用されている言葉の下に参集しているのであります。当然ながら「経営理念」という言葉の概念について、メンバー各々の解釈があり思考があった訳です。それのすり合わせは行いませんでした。というよりもあえて行わなかったという事が真相であります。その理由は、「経営理念」という言葉・概念は社会科学の一つとしての「経営学」の範疇の中に位置付けられるものでありますが、かつての偉大な経済学者、ジョン・メナード・ケインズが述べたように「経営者が新しく何かを始めること」について、「期待収益を計算した結果というよりは、やむにやまれぬ衝動としてのアニマル・スピリッツによるものであることが前提となっている」ということです。読者の皆様方どうでしょうか?「MBA」をはじめとする経営学の教科書では、「期待収益を計算して」、経営戦略を立案して新規に事業を始めることが経営の常軌であるわけです。J・M・ケインズは単なる経済学者だけではなく、ビジネスをもカバーしていた先哲です。このような構造を社会科学は持っています。「経営理念」についてのすり合わせを行わなかった根拠・理由はこの様なものです。従いまして、各人の発表 (最終的にはオブザーバー参加を含めた6名によるもの は研究会での議論は経たものの、最終的な文章そのものは、最小限度の調整を経て、各人の報告書をそのまま掲載するという方法をとりました。今回取り上げた渋沢栄一も、「やむにやまれぬ衝動としてのアニマル・スピリッツ、すなわち大和魂」が、彼を動かし後世に於いて「日本資本主義の父」と称賛されることになったと解します。
◇ ◇ ◇
【テーマ】「永続志向の非上場中小企業に求められるコーポレート・ガバナンス」
【メンバー】(順不同)
【これまでの経緯】
Bグループでは2020年1月上旬にキックオフを開催後、メンターの方々と共に都合13回の会合を重ね、永続志向の中小企業に求められるガバナンス項目の検討や、日本橋の老舗企業や大田区の技術力のあるメーカーの経営者との面談を含む事例分析などを進めて来ました。
この間新型コロナウィルスの動向により4月以降はリアル会議からSkype会議に切り替えると共に、ウィズコロナ時代を踏まえたWeb方式発表会への移行に向けて、スタジオ651からのZoom会議方式により準備を進めて参りました。企業ガバナンス部会小研究会として初めてのWeb発表会となりますが、我々Bグループの研究結果がDFの中小企業支援活動や、本テーマに関連する関係部会の活動のご参考になれば幸いです。
【報告書概要】
わが国の優れた非上場中小企業に共通して見られるガバナンス上の優先課題を、上場企業との比較や老舗企業の事例研究などを通じて抽出し、そのエッセンスを項目ごとに分析することで、世代を超えて永続する中小企業におけるコーポレート・ガバナンスの在り方を提言する
以上