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(2017年9月18日 掲載)

DFガバナンス部会 第12期小研究会 研究成果発表会

昨年(2016)11月以来、3つの小研究会グループは、それぞれ20回近い会合を持って議論・研究を重ねてきました。抽象的なテーマもありましたが、多くの事例を含めた実務経験者の視点からの発表は聴講された方へのアンケート結果でも大いに好評を頂きました。発表会終了後の懇親会では、小研究会の発表メンバーも入って、多くの出席者との活発な意見交換や歓談が行われました。

  • Aグループ
    テーマ:「あるべき企業理念を探る」
    グループリーダー:真木 郁夫氏 他メンバー3人
  • Bグループ
    テーマ:「コーポレートガバナンスコード(CGコード)の評価」
    グループリーダー:生野 雄一氏 他メンバー4人
  • Cグループ
    テーマ:「日本企業のダイバーシティ・マネジメントのあるべき姿」
    グループリーダー:戸村 良雄氏 他メンバー5人
  • 開催日時:平成29年6月7日(水)午後2時〜6時
  • 場  所:日本財団会議室

【要旨】

Aグループ:「あるべき企業理念を探る」

Aグループのミッションは「あるべき経営理念を探る」であるが、ややもすると、観念的な議論に終始し、美辞麗句をならべた経営理念を作成しがちである。

そこで、やさしい言葉の経営理念を仮に置き、実際の経営者の生きざま、考え方を研究し、この理念との共通性、相違点を探ることにより、「あるべき経営理念」を模索する。
進め方とし、まず、仮の経営理念として「三方よし」を置き、時代・業種・国の異なる3人の経営者を選定して、その人物像、人生観、経営理念を研究する。次に、三人の経営理念と仮題「三方よし」との共通点を探り、最後に結論にまとめるという流れを取った。

選定した経営者は、①伊庭貞剛(1847-1926)②本田宗一郎(1906-1991)③ラリー・ペイジ(1973-)である。

上記3人の経営者と何人かの近江商人から学んだ結果として、経営理念とは、美辞麗句をならべた教科書ではなく、額に掲げ飾るものでもなく、経営者の生き様そのものであることが分かった。研究の過程の中で、これらの経営者からは、優れた先見性、リーダーシップ、高い倫理感、強い社会的責任が感じられた。

以上の分析を通して、経営理念のあるべき姿は以下の通りと結論付ける。
(1)企業倫理、社会的責任が明確に示されていること。
(2)国、時代、業種を超えた普遍性があること。
(3)やさしい言葉で表現されること。(理念が末端まで浸透されるため)

Aグループの詳細レポートは以下をご覧ください。

Bグループ:「コーポレートガバナンスコードの評価」

まずコーポレートガバナンスコード(以下、CGコード)の成り立ち・目的を明確にし、コードの構成とその適用のされ方と欧米でのCGコードとの比較をして、全体像を明らかにした。

次に研究の目的を「企業のCGコード対応状況の調査・分析」を通じて「CGコードの評価」に迫ることとした。調査対象としては日経平均採用銘柄225社においてエクスプレイン比率の高い項目から選ぶこととした。さらに絞るべく、エクスプレイン比率の高い7項目のうち、「コーポレートガバナンスに関する報告書」(以下、CG報告書)においてコンプライ開示必須(11項目あり)とされている3-1、4-8、4-11-3の3項目のうち、最も調査する価値があるとみられるCGコード4-11-3(取締役会の実効性評価と結果開示)を調査対象とした。

調査の方法としては、定性分析に力点を置き、上記225社のCG報告書内容をチェックシート化して分析した。具体的にはCGコード4-11-3をコンプライしている186社のうち、評価対象項目に関する記述がある111社(コンプライ企業の59.7%)について、12評価項目のどれを評価対象としているか分析した。『東証ガバナンス白書』によれば、市場一部・二部上場企業でCGコード4-11-3にコンプライしている1,245社のうち評価項目に言及している企業は370社29.7%であり、これに比べると日経平均採用銘柄225社の59.7%はその比率が高い。項目ごとのコンプライ社数や、コンプライ項目数ごとの会社数の分析も行った。さらに、開示姿勢として記述量にも着目して分析を行い、機関設計との相関も見てみた。

コンプライ比率の日英比較では、英国の方がコンプライ比率が高く、企業の形式主義化が指摘されるという興味深い事実が見られた。

以上の分析からベストプラクティス10社を選定し、今後の課題として評価プロセスの外部第三者による評価があると開示が充実する傾向があり、さらに内外企業とのベンチマーク等の工夫によりより多くの企業で開示が進むことを望むと結論付けている。

Bグループの詳細レポートは以下をご覧ください。

Cグループ:「日本企業のダイバーシティ・マネジメントのあるべき姿」

企業が、多様な人材が能力を発揮できる環境整備、つまり「ダイバーシティ・マネジメント」に取り組むことは、潜在的な労働力の活用と、知識や考え方の多様性によるイノベーション創出(生産性の向上)の2つの側面から、日本経済にとって重要とされるようになってきたという問題意識のもとに研究を開始した。

その中で、事例研究(第3章)にもあるが、非常に厳しい経営環境の中で、日本人だ外国人だなどと言わず、まさに「生きるか死ぬか」といった経営判断の中で、有能な人材を登用してきたケースがある。個々の企業の経営環境の中、必死に経営努力を続けていく過程において、結果として「ダイバーシティ・マネジメント」が実現することがある。

また、外食業においてはFC化はダイバーシティ・マネジメントの究極の姿かもしれない。このFC化では、強いブランドを持つ企業が、現地の経営は現地社員に任せ、日本本社は経営指導料を対価にノウハウを海外事業者に伝授することになる。

ダイバーシティは単なる企業文化や人事だけの問題にとどまらず、「生きるか死ぬか」の競争戦略である。やり続けることが非常に重要になる。それには経営者の強いリーダーシップが必要で、加えて、人材戦略の変革が必要になる。各社が自社に適した新たな適材適所→適財適所を試行錯誤を繰り返して作り上げていく必要がある。

研究の結論として、以下の4点が重要と考える。

① ダイバーシティ・マネジメントの本質・特徴を理解する

② 自社の実態に即したダイバーシティ・マネジメントを目指す

③ ダイバーシティ・マネジメントにおける人財教育・養成

④ 魅力ある日本企業への模索

Cグループの詳細レポートは以下をご覧ください。

以上